2010全印工連フォーラム開催
 2010全印工連フォーラムが、10月16日午前9時30分から、岐阜県岐阜市の岐阜グランドホテルで開催された。
 今、印刷業界は未曾有の厳しい社会環境の渦中にあり、2008年の印刷産業規模は出荷額6.9兆円、事業所数2.96万事業所、従業者数35.4万人。少子高齢化、経済成長の成熟、メディアの多様化などの影響を受け、市場規模は縮小の一途を辿っており、このままでは将来的な成長を望むことができないことから、全印工連では昨年、「産業戦略デザイン室」を立ち上げ、2020年の印刷産業の在り方について調査研究を進めてきた。
 フォーラムは、この概要について、最初に島村博之産業戦略デザイン室委員長が「産業成長戦略デザイン」について提言を行い、つづいて「ソリューション・プロバイダーを目指して」をテーマに、パネルディスカッションが行われ、目指すべき「ソリューション・プロバイダー」の意味をはじめ、将来的に進出可能な様々なソリューションの事業領域の提言を行った。

 島村委員長は提言で、次のように説明した。2020年の印刷産業は、このまま従来型印刷市場の減少が続くとした場合、市場規模が24%減少し、中位予測で総出荷額は4.6兆円に落ち込む。事業所数は8千社の減少(32%減)、従業者数は10万人の減少(27%減)が見込まれる。
 2020年の印刷市場は、大きな減少が見込まれるのは商業印刷や出版印刷、需要が比較的堅調なのは包装印刷・特殊印刷・シール・ラベル印刷としている。成長が望まれるのはソフト・サービスと予測している。
 今後10年を生き抜ける印刷会社は、メディア環境の激変に対応し、従来型印刷ビジネスでの過当競争を回避し、ソフト・サービス分野に取組み生産性を向上させられる会社であるとし、2020年まで生き抜いた印刷会社の1事業所当たりの売上高は12%増、従業者数は8%増、1人当たりの売上高は4%増となる。
 ソリューション・プロバイダーは、クライアントや社会が抱える諸問題を、蓄積した技術やノウハウをもって解決する存在を意味する。印刷業では従来の印刷業にとどまらず、印刷業とは別のマーケティング、企画、広告宣伝、フルフィルメント等の印刷の前後工程に係わる事業領域を広めることである。将来的に印刷産業が進出可能な領域としては、経営ソリューション分野、販売ソリューション分野、感性価値ソリューション分野、クロスメディアソリーション分野、クリエイティブソリューション分野、プリントソリューション分野、フルフィルメントソリューション分野、海外ビジネスソリューション分野、地域活性ソリューション分野の9分野を提示した。合理化努力だけではさらなる競争激化が待っている。現在の変革期は、技術革新だけで乗り越えられる生易しいレベルではない。新たなビジネスモデルを確立する必要がある。印刷を中心に発生するさまざまな周辺領域や関連事業において顧客の課題を解決するための多くのノウハウがすでに印刷産業には蓄積されており、それを活かせる余地は想像以上に大きい。具体的には販売促進の技術、感性価値創造、メディアユニバーサルデザイン、個人情報管理、封入・発送などのノウハウである。
 組合に関する戦略として、シンクタンク機能、プランニング機能、リード機能の3つを挙げた。
 この後、「ソリューション・プロバイダーを目指して」をテーマに、コーディネーターを江森克治氏(産業戦略デザイン室副委員長)が務め、パネリストに伊奈友子氏(経済産業省製造産業局デザイン・人間生活システム政策室室長補佐)、上田真弓氏(日本総合研究所総合研究部門主任研究員)、藤井建人氏(日本印刷技術協会シニアリサーチャー)、臼田真人氏(産業戦略デザイン室副委員長)の4人を迎えパネルディスカッションが行われ、印刷業界が国や自治体、他業種、消費者などへ変わる業界の姿をアピールし、積極的に働きかけて提携していくということで、新たな成長戦略を描くことが可能と結んだ。

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