印刷燦燦
「ことわざ考」

理事・小樽支部長 米澤 正喜
米沢印刷紙業株式会社代表取締役社長

 私は『継続は力なり』という、ことわざが好きだ。
 ただ、この語彙を問われたとき、その回答の大多数が『小さなことでも続けることによりいずれは大きな力となる』になるのではないだろうか。もっとも実際に辞書を開くと同様であり、私自身もそう思って疑うことはなかった。しかし、この言葉の持つ“もう一つの意味”を考えさせられる、尊敬すべき人物との出会いがあった。
 小樽市在住の中野良信さん(37)は、市内でスポーツ・インストラクターとマッサージ師を営み、確かな技術と誠実な人柄から、以前から私もマッサージをお願いするようになっていたが、彼は「アームレスラー」という一面を併せ持っている。
 アームレスリングは、腕相撲とは異なり、ウエイト(重量)制や反則行為など厳格な国際ルールに基づき、全身の筋肉における柔軟性や持久力、瞬発力の高さが勝敗を左右する競技で、中野さんは過去に全日本最重量級チャンピオンに輝き、現在も日本のトップクラスとして世界一を目指している。
 身長166cm、体重134s、胸囲145cmの体躯が筋肉で覆われ、まさに屈強そのものだが、それでも彼の挑戦する最重量級のなかでは、いわゆる“小兵”で体格差というハンデは否めず、それを克服するために、日々200sのベンチプレスをはじめ想像を絶するようなハードな鍛錬で自分を責めぬいて行く。普段見せる、謙虚で誰からも愛される温厚な笑顔からは到底連想できないほどの、文字通り「鬼の形相」に豹変する瞬間だ。
 困難に正対し、常に上を目指して地道な努力を重ねる彼の姿に、私は『継続するには力がなければ出来ないのだ』という“もう一つの意味”を強く感じた。
 世相の景気回復論を今ひとつ実感できない経営環境にあるなか、培ってきた力をさらに養うべく挑戦の姿勢を保ちながら、中野さんの夢への飛躍を応援したいと思う。

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