「今、経営者がなすべきこと」
平成21年度第2回全道委員長会議グループディスカッション
   平成21年度第2回全道委員長会議が、3月5日午後1時から札幌市中央区の札幌パークホテルで全道から委員40人が出席して開催された。
 最初の全体会議では、全日本印刷工業組合連合会の水上会長を講師に「業態変革実践!〜『モノつくりからサービスつくり』の発想で顧客の問題解決のプロへ〜」をテーマに「業態変革実践!研修会」が開催された。(本紙647号既報)
 次に、研修会を受けて「今、経営者は何をなすべきか」をテーマにグループディスカッションが行われた。
 

 グループディスカッションは、全道各地から参加の委員のほかに来賓として出席いただいた全印工連の水上会長、萩原業態変革推進企画室委員、池尻事務局次長と岡部理事長が加わり、A、B、Cの3つのグループに分かれて「今、経営者がなすべきこと」ことをテーマに1時間30分にわたり討議が行われ、討議内容について各グループから発表が行われた。

Aグループ
 発表者 野津雅之氏(十勝支部)


 水上会長の不況時に経営者がなすべきことということで話を始めた。いろいろな支部から出てくるとそれぞれの事情を話し、直接的にこのタイトルと違った話も結構出て非常に楽しく拝聴させてもらった。水上会長が言われたように時代は変わっている。今までと同じような営業をし、あるいは経営をしても先細りである。各社の事情に合わせることになると思うが、それぞれ時代が変わっていることの認識を改めて考え各社各様に変えて行かなければならない。そのあたりが大体共通した認識と思う。
 我々は業態変革だとかワンストップサービスで従来の印刷業からもう少し枠をはみ出して周辺の業務に進出しようとしている。それでは我々に近い周りの業態はどうかというとやはり我々の業界を狙って進んで来ているのも間違いないということである。我々は自分達だけが他を攻めているという認識があるかも知れないが、印刷業を攻めて来る他の業種もあるということも考えなければならない。私も実に同感である。まとめて言うならば危機意識を高く持たなければならないと感じた。
 経営者が今という中で、数字とは関係ないが我々印刷産業を一つの文字の文化あるいは情報の文化と捉えた場合に北海道の中でできる上製本は非常に限られている。紙の使用量も2%であるが、出版の関係でいうと東京で80%行われているようであるが、経営者としては地域で興った産業の文化を伝承する、あるいは地域貢献の一環として文化を守るような経営のスタンスが必要である。
 

Bグループ
 発表者 米川浩二氏(釧根支部)


 業態変革の事例が出たので話をする。
 出版業界では活字離れが起きていて雑誌が売れない。雑誌が売れないということは雑誌に載っている広告の影響が無くなってくる。ではどうするべきか。ネットの広告の売上げが今凄く上がっているので出版社のホームページを制作してそこで販売してもらう。パソコンより携帯電話でネットを見る方が多いのでそちらのホームページも作る。そこからデータを配信する。
 今まで、商品に自分のところで価格をつけることが出来なかった。どうすれば良いのか。自社で製品を開発してしまう。そこで例が出たのがカレンダーとアルバムが一緒になったもの。カレンダーの絵柄のところにフイルムを付け、そこに自分達で写真を入れ、12月まで行ったら1つのアルバムが完成する。それを企業向けでなくコンシュマー向けに売ることにし東急ハンズで販売の許可が下りた。東急ハンズのカレンダー売上げの2位になり、東急ハンズも驚いていたという話があった。それを利用して今まで自分の会社の営業の方向性がばらばらであったものを1つの商品ができたということで一つの方向性を持って営業をまとめて販売することができる。
 自分の会社の顧客満足度を調査するためにお客様アンケートを行った。お客様アンケートを行うことにより自分の会社の良いところ悪いところが見えてくるので、これからどうすれば良いか方向性が見えてきた。お客様アンケートを実施する時もただアンケートを渡しても面倒くさいといってやってくれないので図書券を1枚入れたら快く引き受けてくれた。
 売上げが下がっているのはお客様の要望に応えられていないということで、売上げが上がっているのはお客様の要望に応えられている。我々印刷業は自分達の仕事に誇りを持ってお客様に自信を持ってお勧めできる印刷物を製作してお客様も自分達も幸せになれる地域に貢献できる印刷物を作ることが一番ではないかという結論に達した。

Cグループ
 発表者 伊貝正志氏(釧根支部)


 当社で印刷ヤレが日常茶飯事で毎日のように各部署で起きている現状を何とか改善したいという試みで5年位経つがトラブル報告および改善伝票という書式のものを作って現在もやっている話をしたら、何社かから自分のところもやっているという意見が出た。当社の事例では、この報告書を記載するのは、営業から各工程を経て流れて行く中で気付いた者が各工程で気付いたトラブルを書く、納品を終えたものはお客さんの方から間違ったものが届いたとか文字が化けているというような具体的なかたちで入ってくる。それは電話を受けた者がこういうようなトラブルが入ったということを記載して、それが担当の部署に伝票が回り、そういうことに至った原因、次の項目が大事なことになるが今後起こさない具体的な形の提案というか考えを記載するような単純な書式のものである。最初始めた時は注意が足りなかったというような感じのものが羅列してあり、そうではなく注意というのはどこをどう具体的にどうやればこのトラブルが直って行くか、トラブった個人を責めることは一切ないから具体的に次に起こさないかたちを書きなさいということを何度も何度も言い、今現在は良いかたちで機能しながら動いている。それはある意味で人材育成というジャンルの中で括られると思う。さらに個人の仕事に対する管理する能力、社長の管理力、各管理力をそういうかたちで気付かせるという面で役立っている。思い込みでミスをすることが当社の事例でも多い。そういうことを他の会社の方は仕事に掛かる前に5分間トラブルのないようなことを考えるように指導している。前の段階でおかしいと思ったことはそのまま仕事を進めないで営業なり前の工程の者に仕事を止め確認をして掛かるという会社もあった。かたちは違っても各社各様に何らかの手当てがなされている。ここの部分はないがしろになりがちであるがそれを繰り返しやることによって自分に対する仕事の意識付けが変わってくるということが実際ある。昨年は80件くらいの伝票が来ているが、私も含めて各課に他の部署でこういうトラブルが起きてこういう改善をしたというようなことが分かるような全社的な流れで考えられるような取り組みをしている。
 ワンストップサービスで何をすればという考えの中で新規開拓をやったそうであるが、結果が思わしくないということで既存のユーザーに対して印刷物以外の感熱紙やPPCの売り込みを図った。その結果、昨年1年で5,000万円位の売上が上がったということである。私はそういうものはアスクルのようなところにシフトしてそういう観点からものを見ることが出来なかったが、日頃付き合いの深いユーザーとの間ではそういうものも販売商品の1つとして考えて行けるということが気付かされたような思いをした。
 この変革の時代、業態変革を含めて、ダーウィンの進化論を事例に上げて、他の業種であるが説明したのを聞いて全く我々の業界も同じだと感じた。今、地球上に生存している生物はどうして生き延びてきたのかという観点の中で、強い者が生き延びてきたのではない、恐竜のような強い者が絶滅しているわけで、しかも賢い動物が生き延びているわけでもない、時代とともに変化できてきた生物が今生存している。まさに我々の業界に照らし合わせても変化できる会社、企業が生き延びられる。その具体的なことを水上会長の講演をもとに日々模索しながら探し求めている。時代に即応した形で変革して行くというそこの観点を重要視というかキーワードにしながら組合という媒体を良い教師として大きく変わって行くことが必要ではないか。

 各グループの発表に対して、岡部理事長、水上全印工連会長、萩原同業態変革推進企画室委員、池尻同事務局次長からそれぞれ感想所見が述べられた。

理事長集約 北印工組理事長 岡部康彦氏
 危機意識を持とう。数値を示し社員に説明することを毎日のように繰り返してやったら良い。カレンダーとアルバムを組み合わせた業態変革のすばらしいことをやり遂げて成功した。顧客満足度というところで売上が下がるのはお客様に満足度を与えていない、売上が上がるということはお客様に満足を与えている。是非顧客満足度を大事にしていこう。ヤレの防止に改善伝票を作成し報告書を作らせて今後どうしたらヤレが減って行くのかということをやっている。先ほど会長から売上の20%が紙代という話があった。それに結び付くのでないか。新規開拓をしたが成果が上がらない。
 私もAテーブルに参加させてもらったが会社は何のためにあるのかという話があった。会社は従業員の生活を安定させる。毎日朝から晩まで一生懸命汗を流してくれている社員の生活を安定させるのが1つである。株主というか出資してくれている人にリターンする。社会への貢献、納税などのかたちで社会へ貢献する。もう1つは次の投資への余剰資金として利益を追求して行かなければならない。この4つの責任を実現するために利益が必要になる。公認会計士の上坂さんの著書に利益を上げる会社の共通点は[1]大きな明るい声で挨拶が交わされている会社[2]業態変革の最初にあった5Sの整理、整頓、清潔、清掃、躾が行き届いている会社[3]社長が社員を大事にして職場では先輩後輩をわきまえ互いに尊重し合っている会社[4]社長が勉強熱心でいつも元気である、だそうである。是非、我々はこのようなことで儲かる会社、利益を上げる会社にして行きたい。社内には必ず3種類の人がいるという。人財は優良社員、人在は指示されたことは遂行できる社員、人罪は駄目な社員。この比率は人財が社員の中の2割、人在が6割、人罪が2割いるそうである。この比率を社員教育や勉強をさせながら比率を変えて行く。人罪を1割にして人在を7割にして行けばその企業は伸びて行くということである。新規開拓に力を入れようというが一番大事なのは今当社の力になっている今のお客様であることを忘れてはならない。今のお客様に対して満足してもらうために本業に力を注ぐことが重要である。それが会社の背骨を強固にして行くのではないかと言っている。私は人と人との繋がり、人とお客様の繋がり、何だかんだ時代が変わってもこれが一番大事なことではないかと思う。私が昔、営業の時にそのお客さんをファンにさせる、ファンにさせたら今度は虜にさせる。そこまで行ったら絶対そのお客さんは離れないという話を聞いた。虜にするのはなかなか大変だと思うが、そこまで宣伝したりサービスをしたりして営業力を付けて行くということだと思う。

全印工連集約[1]  全印工連会長 水上光啓氏
 いつもいろいろな会に出て思うのは皆さん真面目である。印刷会社は真面目である。なかなか羽目を外したところを見たことがない。私もAテーブルにいた。岡部理事長も話をしたがたくさんの話がでた。その中で集約すると話が全て人に集約してきたような気がしてならない。最後の差別化はやはり人だと思う。十勝の野津さんから変化できないのは経営者の心である。グサッときた。理事長も話をしたがオホーツクの松井さんが今大切なのは人と人との繋がりが評価されて仕事になる。素敵なことである。30年前に富士フイルムのセミナーで広中平祐という数学者がいてフィールズ賞という数学のノーベル賞をもらった方が、ハイテクとハイタッチと言ったのが忘れられない。30年前だが広中平祐さんのお兄さんが京都で小さな本屋さんをやっているが、大きな書店がPOSで流通在庫の管理をしていてとても敵わない。大きい書店はハイテク、小さな屋はハイタッチということで来たお客さんにお茶を一杯出そう、毎月来てくれるお客さんにはこちらから届けに行こう。こんなところにハイタッチの原点のあるのだと私も若い頃思った。今も同じような気がする。IT化が進む社会でも進めば進むほどますます人でなければ出来ないことが必ずあると思う。我々はそこを今もこれからも多いに参考にすべきであると思う。最後にマドンナという歌手はIT化の時代にネットで流れてしまうのでCDは出さないでライブだけ行くと徹底している。我々は人ということを考えて企業を進めたらまだまだ十分行けると思う。

全印工連集約[2] 全印工連業態変革推進企画室委員 萩原誠氏
 私はBテーブルに参加させてもらった。飯村副理事長から感性価値も業態変革ももうやっている。それをやりながらどんどん進んでいるという力強い話を聞かせてもらった。飯村副理事長のところは結婚式の仕事が多いということで、宛名だとか列席者表だとかいろいろなサービスをやっているという話であった。発表者の米川常務は自分でデザインもやられている。お客様と直接話をし、それを製品にしている。加藤社長はカレンダーとアルバムの新しい商品を開発して売っている。そのような活動をどんどんしてもらい、いろいろな事例を聞かせてもらえればと思っている。今年6月から業態変革の委員長をやらせてもらうが、いろいろ話を聞かせてもらい、あちらこちらに行ってその話をさせてもらいたい。

全印工連集約[3] 全印工連事務局次長 池尻淳一氏
 用紙価格について、北海道価格ということも承知していて全印工連でも対応している。水上会長を通じ、メーカー、卸商と話し合いを進めているが、なかなかきちんとした返事、対応が出来ていない。このことは水上会長の頭の中には常にあり、22年度の組織の構成の中でも用紙対策の役員の候補者を選定中であると思う。北海道の要望については引き続き、東京の役員を中心としてきちんとした対応を図って行くことには変わりない。
 私はCテーブルに参加させてもらい、ソリューションマップが非常に役立っている。それを参考に今後も業態変革を進めて行きたいという話を聞いて非常に嬉しく思った。

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