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準備が全てを制す

理事・札幌副支部長 川越  仁
川越製袋株式会社代表取締役

 不況下でも春は廻る。春眠暁を覚えずなんとも目覚めが遅く、昼下がりなどは柔らかな日差しを浴びていると、うとうとと舟を漕ぎだしてしまいそうだ。
 さて、新年度に入り数日が経過したがうららかな春とは対照的に注文残を持てず、心穏やかならぬ日々が続いている。
 大企業は新年度4月をマイナス予算でスタートをしていると聞く、当然販促費の抑制や消耗品の発注の手控えとなる。受注産業には厳しいこの春だ。
 イオンとドコモが共同出資で情報系の会社を設立するニュースが出ていた。イオンの狙いはただ一つでチラシなど販促費の削減だ。登録したお客様の好みのブランドの新作や売り出し情報、趣味や嗜好に沿った情報を携帯に流すサービスを目指す。既にこの手法を取り入れている流通業も多く目新しいものではないが、マスメディア広告手段を採らなくとも「その人」のためだけの情報が狙い撃ちで求める人に求める商品情報が安価で届く。
 以前は携帯メールや情報サービスなど電話機能以外の携帯の持つ可能性については高を括っていたが、機能の向上が図られるにつれ、実現できたら便利なアイデアであったものが開発され、今や即時性が高くしかも低コストなメディアとして唯一伸びている。
 一過性のマス広告から受け手裁量で消去することも残すこともできるネットや携帯のストック情報が今後も増えそう。他のメディアには手強い相手だ。
 弊社の生業である袋にも進行しているIT化による影響は出ている。例えば患者データの保存が電子化されたり、レントゲンフィルムの現物保存義務はなくなった。当然X線袋と称する袋は一部電子化設備の立ち遅れた病院などに若干の需要があるのみになってしまった。
 また、ネット販売やオンラインショッピングが台頭しDM封筒の量そのものが減少傾向にある。官需ではe‐TAXでの納税も徐々にだが増え封筒需要が減少している。
 今が底なのか、さらに谷が深いのか、景気が回復すると需要の回復が見込めるのか、どの問いにも首をひねるばかりだが、少なくともピーク時には戻らないことだけは確かだろう。
 数年前までは既製品封筒メーカーの狭間で袋屋として生かしていただき、IT化の進捗が急でも封筒需要に大きな変化はないと思っていたが形勢は変わった。しかしどのような業種にも変革期はあるのだから今がその時期と思えば良いのだろう。
 付加価値を創造することは難しい仕事だが、きっと出来ることがあるとポジティブに考えたい。
 そのための準備はおさおさ怠らないよう情報収集とアイデアの蓄積を常に考えていたい。
 何も実現できないかもしれないし、ろくな準備も出来ないだろうが、「準備が全てを制す」と思い、現実逃避とならないよう、もう少し悩み夢見てみようと思う。

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