「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」説明会開催 講師 北海道印刷工業組合理事長 岡 部 康 彦 氏 | ||||
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はじめに | ||||
何故、私が講師かというと業態変革推進プランの時には委員の方にわざわざ東京から来てもらったが、水上新会長になり地元は地元の言葉で話した方が親しみがあっていいのではないかということになり、全国47都道府県の理事長が全員講師になることになった。 | ||||
世の中の動き
その後、いろいろな企業の合併、統合、業務提携が毎日のように新聞に取り沙汰されている。ハムのマルハとニチロ、キリンビールとメルシャン、日清食品と明星食品、アサヒビールとカゴメ、勝木石油と太平洋石油、三越と伊勢丹等々がある。三越と伊勢丹は最大のライバル同士であるが、何故、業務提携をしなければならなかったのかというと、百貨店業界が少子高齢化による人口減で購買力が減るという危機感から業務提携に動いたと新聞紙上に載っていた。つい最近、我々の関連業であるインキ業界でDICと大日本印刷の子会社であるザ・インクテックとの事業統合による新会社設立の記事も載っていた。年末には損保会社の三井住友海上、あいおい、ニッセイ同和の経営統合が発表され国内最大の損保会社になると報道された。 | ||||
印刷関連業界の変化
我々に関連する紙卸業は日本洋紙板紙卸商業組合があり、最盛期には756社あったが現在は489社になったそうである。主要製紙メーカーは13社あったものが現在は5社である。王子製紙、日本製紙、北越製紙、大王製紙、三菱製紙である。洋紙代理店も10数社あったものが現在は5社である。日本紙パルプ商事、国際紙パルプ商事、新生紙パルプ商事、日本紙通商、三菱紙パルプ販売である。集約、寡占化され、従来は足並みが乱れて値上げがなかなか容易でなかったものが製紙メーカーが強い態度に出ると値上げが通りつつあるのが現状のようである。去年の6月に値上げが行われた。見事な15%一斉値上げであったが、こういうことがあるからできたのかもしれない。 |
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政策の転換
全印工連の浅野前会長は「環境が変わってきて変化のスピードが加速し続けている。国際化、高度情報化、少子高齢化、成熟化の結果、社会を構成する主役は産業から消費者になり、競争相手も広域になり異質との競争が始まったからだ」と述べている。 | ||||
「業態変革推進プラン−全印工連2008計画」を発表 第1ステージのテーマが業態変革ミニマムであった。先ず5S運動の実行である。整理、整頓、清掃、清潔、躾である。整理は必要なときに直ぐ物を取り出せるようすることである。原稿が何処にあるかわからない、前の原稿は何処に行ったと探している時間がもったいない。基本中の基本から先ず始めようということである。もう一つはパソコンを皆で使おうということである。1人に1台、パソコンを使わないとこれからは情報が入ってこないというサディスションもあった。 第3ステージのテーマが新創業はワンストップサービスであった。ワンストップサービスで収益拡大へである。新創業はワンストップサービスである。どの企業にも創業期があった。自分が社長になった、2代目で引き継いで社長になったときである。創業の時と現在を比較してみるとお客様の数でも資金力、技術力、設備、従業員すべてにおいて現在の方が豊であるのは間違いない。ただ創業の時の方が優れているものがあるとしたら会社経営をするに当たっての会社をこうする、従業員にはこうしてやりたいという熱い心ではないか。それに一度戻ってみようということである。企業家魂ではないか。ワンストップサービスはお客様に煩わしさ、面倒くささ、無駄な時間を如何に使わせないかということである。あなたの会社に頼むとすべて大丈夫、すべてやってくれる。すべてを引き受けられる会社にしようということである。自社ですべて出来るわけがないという人もいると思う。自社だけですべてをやる必要はない。そこでコラボレーションが出てくる。仲間を作って、企業同士のグループ化を目指して、自社でできないものはお願いする。ただ、今の自社の得意先だけは逃がしては駄目である。これを離さないようしながら進めることが一番肝心だと思う。 |
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「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」へ進展
昨年10月の鹿児島大会で「業態変革実践プラン−2010計画」が発表された。北海道印刷工業組合として「ワンストップサービス実践ガイドブック」と「コストダウン実践プラン」の2冊を買い、全組合員に送付した。これを読むと分かるが、優しく書いてあるというがなかなか読んでもらえない。実践ガイドブックに全国の4社の成功例が載っている。そのうちの1社が札幌の正文舎印刷である。北海道にもそういう企業がある。3月6日に道内で成功している企業の事例発表をしてもらい皆さんの役に立ちたいと考えている。従来の印刷会社は印刷物を作って納品するだけであった。それをもう一歩踏み込んで印刷付帯サービスをしようということである。 | ||||
「業態変革実践プラン−全印工連2010計画−」
実践!業態変革 ワンストップサービスで収益拡大へ
■業態変革実践プラン−全印工連2010計画−
■業態変革の必要性 かつての人口増加や高度経済成長を背景とした大量生産・大量消費のビジネスモデルは通用しなくなった。印刷業が量産を前提とした印刷物製造の事業領域、即ち過去のビジネスモデルに留まっていたのでは結局は値下げ競争に陥り、その結果として一企業だけでなく産業全体が疲弊してしまうことを避けなければならない。過去の成功体験を見直し、勇気を持って新しい事業領域に漕ぎ出す時が来た。 ■2008計画から2010計画へ 今まで2008計画において数々の業界指針となる提言が行われてきたが、2008計画では「理解はしたけれども、実施はどうすればいいんだろう」という声が聞かれた。そこで全印工連は2008計画を引き継ぐ事業として「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」をスタートした。2010計画は2008計画を基に各論を導き出し、業態変革を実践するための支援事業を行う。 ■実践プラン2010計画のテーマ 「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」のテーマは「実践!業態変革 ワンストップサービスで収益拡大へ」である。 今まで提唱してきた業態変革を実践に結びつける「実践! 業態変革」。市場環境の変化や成長の変化に対応し、顧客が求める印刷を中心とした周辺領域への拡大と顧客への課題解決の提供。これはワンストップサービスを基本にして行こうという考え方である。高付加価値化による業界収益構造の改善と価格以外での差別化施策により収益拡大を目指す。 ■ワンストップサービスの出発点は印刷付帯サービスから ワンストップサービスへの第一歩は印刷付帯サービスの充実である。2008計画第3ステージでは5Doorsを発表したが、その中のDoor5で「ワンストップサービスの出発点は印刷付帯サービスから」と提唱されている。先ずは「印刷物制作を中心として前後工程の印刷付帯サービスを連携させた範囲」を拡大させていこうという考え方、これが事業領域の拡大である。 ■印刷業界成長の方向性 収益拡大に向けた印刷業界の成長の方向性を考えてみよう。印刷の媒体価値の向上は技術面、生産性を含め工業としての印刷会社として当然のことであり永遠のテーマである。製造業としての印刷業は、従来からの印刷工程を中心とした合理化技術の深堀り、そして新商品の開発などにより印刷媒体価値のさらなる向上を図る必要がある。一方さらなる業界の成長は、印刷周辺領域への仕事の取組みが必要で、それは永年言われ続けているソフト化、サービス化である。繰り返しになるが、環境の変化、成長の変化に対応し、顧客が求める印刷を中心とした周辺領域への拡大と、顧客への課題解決の提供が印刷業界に求められている。従来の製造業としてのスタンスとこれからのソフト化・サービス化の両方を視野に入れた戦略の構築が大切である。それにより印刷業界の成長と顧客満足の向上が確約される。 ■印刷付帯サービスへの事業領域の拡大 アメリカの印刷業界の現状から印刷付帯サービスの可能性について検証してみることにする。アメリカの印刷業界は日本の先を進んでいて、日本の印刷業界がアメリカを追随するようなかたちになっていると言われているが、アメリカの印刷工業会(PIA)は印刷付帯サービスの必要性を訴え続けている。PIA会長のマイケル・マーキン氏は、「1ドルの印刷のまわりに6〜8ドルの付帯サービス」があると言っている。PIAの最新の調査からも印刷付帯サービスの将来性を見ることができる。売上に占める分野別伸び率をみると、従来のインキによる印刷の伸び率は2007年に0%になったのに対し、トナー/デジタル印刷は4%以上の伸び率を示している。印刷付帯サービスは安定して3%以上の伸びを示している。印刷付帯サービスは十分な可能性を示し、業界の成長を実現させる原動力となっている。 ■印刷付帯サービスの成長性 印刷付帯サービスに着目する理由としてPIAは2つの見解を述べている。1つは付帯サービスを取り込み売上減少を補うというコンセプトは印刷会社の収益性を高める。もう1つは印刷付帯サービスは印刷会社の中核的機能ではないが、しばしば顧客のニーズを取り組むことにより中核的事業そのものの付加価値向上に結びつくものである。印刷付帯サービスは売上減少を補い、収益性を高め、さらに顧客ニーズを取り込み、付加価値の向上に結びつくという見解である。 ■印刷付帯サービスの可能性 印刷付帯サービスには、印刷を中心に企画・デザイン・撮影・編集などのコンテンツ制作や光沢加工・箔押しなどの加工、配送・補完業務など印刷業に隣接するさまざまなビジネスが存在している。印刷付帯サービスには広い範囲にわたる可能性が存在している。 ■ワンストップサービスとは 印刷付帯サービスの可能性について述べてきたが、2010計画ではワンストップサービスを中心としている。印刷付帯サービスとワンストップサービスはまったく同じものではないが、印刷付帯サービスは印刷会社からの視点、ワンストップサービスはもう一歩進んで顧客の視点に立った一連のサービスと考えて行くことにする。しかし、すべてを自社でこなすのは困難である。そこで各分野で強みを持つ専門企業との適切な連携、コラボレーション、全印工連が提唱する共創ネットワークが前提となる。 ■ワンストップサービスは顧客接点の改善から 今までの印刷営業はどちらかというと印刷物を作ることに集中し、顧客が抱えている事柄に目が向いていなかった。印刷物受注の取引のことだけに頭が向いていて、顧客が印刷物を作る目的やそれに付随して考えていることへのアプローチなど顧客との取り組みをしていなかった。印刷物を納めて対価をいただくだけでは「取引」に過ぎない。もう一歩踏み込んだサービスの提供、「取組」が重要になる。「取組」とは顧客と相対するのではなく、顧客と同じ視線で顧客にとって良い結果を導き出すことである。言われたとおりに印刷する印刷会社はいくらでもある。顧客の求めているのは「取引」から「取組」のできる会社である。「取引」から「取組」へ。顧客の目標達成のために共に考え、共に悩みを共有することが大切である。 ■ワンストップサービスは誰にでもできる ワンストップサービスは、すべての会社に取り組むチャンスがある。ワンストップサービスに会社の規模、設備、立地条件は関係ない。どんな会社でも必ずできる。全印工連が提唱している「共創ネットワーク」の考え方を中心に組合員同士がイコールパートナーとなって、さらに印刷隣接業界の専門性も利用して印刷業界を大きく広げていくべきである。 ■ワンストップサービス受注の背景 印刷物を発注する顧客は、企画、原稿作成、発注、校正、製品の受け取り、保管、発送、効果の確認、次の企画に反映と実に多くに工程を必要としている。顧客への発送のタイミングも異なるので在庫保管も必要である。発送先の顧客データは常にメンテナンスしなければならない。 かつてと違い、必要な媒体は印刷物だけではない。インターネットやビデオもある。ネット配信にしてもパソコン向け、ケータイ向けがある。近頃は個人情報保護や環境対応にも目を向けなければならない。ますます作業は煩雑、内容は複雑多岐にわたっている。パンフレットを作るにしても派生する仕事全体の管理まで、とても目が行き届かないことが多い。 顧客は煩雑な作業から解放されたいという気持ちを常に抱いている。そこへまとめて面倒をみてくれる会社が現れたら担当者はどう思うか。煩雑な作業を負わなくて済み、コストも削減できるはずである。ただし、このまとめて面倒をみてくれる会社は、何も印刷会社であるとは限らない。顧客は自分にメリットがもたらされるのであれば、それが広告会社だろうと制作会社、イベント会社、システム会社、IT会社、発送会社だろうと一向に構わない。 ■ワンストップサービスの対象 ワンストップサービスの対象は特定の企業や団体ばかりではない。例えば、地元行政と商店街、大学などと印刷会社が組んで、町おこしのイベント開催やモバイルへの情報配信、アンケートの実施・回収・分析などを請け負った例などはある。地域活性化という大きなテーマを考えた時、ワンストップサービスは欠かせないものと言える。しかも、あらゆる場面で必ず印刷物が発生する。印刷物用のデータはポスター、パンフレット、看板、ノベルティグッズ、ホームページなどに転用できるので、印刷会社が付帯サービスに関わるのが最も効率が良いケースが多い。 ■ワンストップサービスの実践 価格だけを武器に印刷物を受注したり、製品を納めたら仕事は完了と考える印刷会社は、目の前の収益拡大のチャンスを自ら取り逃がしている。経営者から社員まで全員が、自社との取引先の関係を一度総点検することが必要である。 納めた印刷物がどのように利用されたのか、印刷物にどんな効果を求めているのかを考えてほしい。ワンストップサービスを展開するうえでの印刷会社の強みは、「印刷」を知っていることにほかならない。いくらIT会社、制作会社が努力してもプロの印刷・加工をものにすることはなかなか出来ない。すべて外注するにしても多種多様な印刷を取り仕切るのは難しい。その点、印刷会社であれば独自のノウハウやネットワークが必ず活かされる。 制作会社やIT会社より印刷会社がセールスプロモーションやデザイン、映像、Web、郵便仕分け、コールセンター業務などに進出する方が障壁はずっと低いと言える。すべて自社で手がけることは不可能であるので、そこは各分野の専門企業と提携して行くことになる。 ■顧客の課題解決 ワンストップサービスの展開・推進は大変重要であるが、ワンストップサービスにより、顧客の課題解決を提供することがさらに重要になる。顧客の期待をかたちにする。顧客が考えていることを効果的に実現し、顧客視点で最適な製品・サービスを提供する。これが課題解決、ソリューションの提供である。顧客の悩みや課題を解決し、選ばれる印刷会社になることである。 |
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