「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」説明会開催
講師 北海道印刷工業組合理事長  岡 部 康 彦 氏
 昨年10月に発表になった「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」についての説明会が、1月9日午後2時45分から札幌市中央区の札幌グランドホテルで、北海道印刷工業組合理事長の岡部康彦氏が講師を務め、80余人が出席して開催された。

はじめに
 何故、私が講師かというと業態変革推進プランの時には委員の方にわざわざ東京から来てもらったが、水上新会長になり地元は地元の言葉で話した方が親しみがあっていいのではないかということになり、全国47都道府県の理事長が全員講師になることになった。
世の中の動き

岡部 康彦氏
 21世紀というか2000年になって世の中の動きが非常に変化をしてきた。日本国内の変化について皆さんと一緒に考えてみたいと思う。金融機関を見てみると都市銀行が12行あったが現在は4行しかない。みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそなの4行である。政府系の長期信用銀行が無くなり今は民間の新生銀行に変わった。日本債権信用銀行も民間のあおぞら銀行となった。日本興業銀行はなくなった。昨年10月には我々の身近な商工中金も民営化になった。中小公庫、国民公庫、農林公庫が統合され日本政策金融公庫となった。信用金庫は全国に約600行あったが昨年3月現在で280行以下になった。我々の関連企業の中でもコニカミノルタがフイルム業界から撤退した。富士フイルムは5,000人のリストラを発表し、富士ゼロックスをグループ化した。富士フイルムの古森社長が講演会で「カラーフイルムの世界需要は2000年をピークにそれ以降激減して現在は全盛期の40%にダウンしている。2000年までは当社の収益の大部分が一般フイルムであったものが2005年には殆ど儲からない分野になった。そこで第2創業といわれる大胆な改革をした。大変革をしなければならなかった」と話していた。それが最近のテレビCM等で見る松田聖子と中島みゆきの化粧品のCMである。「北海道の印刷」にも今までの富士フイルムの広告とは全く違うサプリメント&スキンケアが載っている。富士フイルムは、今、健康商品や医療分野に進出している。
 その後、いろいろな企業の合併、統合、業務提携が毎日のように新聞に取り沙汰されている。ハムのマルハとニチロ、キリンビールとメルシャン、日清食品と明星食品、アサヒビールとカゴメ、勝木石油と太平洋石油、三越と伊勢丹等々がある。三越と伊勢丹は最大のライバル同士であるが、何故、業務提携をしなければならなかったのかというと、百貨店業界が少子高齢化による人口減で購買力が減るという危機感から業務提携に動いたと新聞紙上に載っていた。つい最近、我々の関連業であるインキ業界でDICと大日本印刷の子会社であるザ・インクテックとの事業統合による新会社設立の記事も載っていた。年末には損保会社の三井住友海上、あいおい、ニッセイ同和の経営統合が発表され国内最大の損保会社になると報道された。

印刷関連業界の変化

 我々に関連する紙卸業は日本洋紙板紙卸商業組合があり、最盛期には756社あったが現在は489社になったそうである。主要製紙メーカーは13社あったものが現在は5社である。王子製紙、日本製紙、北越製紙、大王製紙、三菱製紙である。洋紙代理店も10数社あったものが現在は5社である。日本紙パルプ商事、国際紙パルプ商事、新生紙パルプ商事、日本紙通商、三菱紙パルプ販売である。集約、寡占化され、従来は足並みが乱れて値上げがなかなか容易でなかったものが製紙メーカーが強い態度に出ると値上げが通りつつあるのが現状のようである。去年の6月に値上げが行われた。見事な15%一斉値上げであったが、こういうことがあるからできたのかもしれない。
 何故、合併や統合が進むのか、また何故進めて行かなければならないのかというと世界の先進国の企業はグローバル化経済を見越し、あらゆる企業が生き残り策として規模拡大による集約化でコスト削減と販路の拡大競争に走っているのが原因である。

政策の転換

 全印工連の浅野前会長は「環境が変わってきて変化のスピードが加速し続けている。国際化、高度情報化、少子高齢化、成熟化の結果、社会を構成する主役は産業から消費者になり、競争相手も広域になり異質との競争が始まったからだ」と述べている。
 国の施策も大きく変化してきた。1990年までは通算4次におよぶ構造改善事業が推進された。国の中小企業施策を背景に設備投資を手段として大企業との格差是正を図ることを目的とし工業団地を造り業界の各社が集まる護送船団方式である。2000年になり国の施策が180度変わった。我々の所管は経済産業省の紙業印刷業課であったがメディアコンテンツ課に変わり、中小企業経営革新支援法が施行された。今までは護送船団方式で来ていたものがそれぞれの企業が個性的にかつ同じ印刷業であっても多様性、小粒でもいいから世界の中でキラリと光る中小企業を支援するという変化への対応が求められてきた。酒屋さんがコンビニに変化したところもある。全国の焼酎だけを扱っている、世界のワインを専門に扱っている、日本酒なら全国何処のものでも揃えているというように変化、特化する酒屋さんが多数出てきたのも事実である。運送業では引越業という商売が生まれた。今までは荷物を受け取り指定の場所に置いて帰るのが運送業の仕事であった。ところがその荷物は忙しい人が徹夜で梱包したのかもしれない、また届いた荷物を徹夜で開梱しているのかもしれない。そんなときにお客様の立場になって考えた引越という商売が新たな商売として生まれきた。

「業態変革推進プラン−全印工連2008計画」を発表

 我々印刷業界も変容、変革して行かなければならないのではないかということで出てきたのが業態変革推進プランである。そして実践プランに入っていくわけである。酒屋さんが変わった、運送屋さんが変わった、印刷会社も変わろうではないかということである。変化は世の中の流れに一緒にふらふらと付いて行くこと、変革は自らの意志で自らの心を変えるということである。全印工連は企業の在り様を自らの力で変えて行こうと作った「業態変革推進プラン−全印工連2008計画」を平成16年に発表した。
 第1ステージのテーマが業態変革ミニマムであった。先ず5S運動の実行である。整理、整頓、清掃、清潔、躾である。整理は必要なときに直ぐ物を取り出せるようすることである。原稿が何処にあるかわからない、前の原稿は何処に行ったと探している時間がもったいない。基本中の基本から先ず始めようということである。もう一つはパソコンを皆で使おうということである。1人に1台、パソコンを使わないとこれからは情報が入ってこないというサディスションもあった。
 第2ステージのテーマが原点回帰であった。今朝の日経新聞に世界のトヨタが原点回帰で収益拡大と載っていた。我々の業態変革推進委員会の委員はもっと前から原点回帰という言葉を使っていた。原点回帰とは自社の弱みをきちんと見極めて見詰めることによって収益性、成長性、生産性が分かる。そうすることによって弱みを補完する戦略をとるのか、強みをさらに強くするかはそれぞれの企業の考え方次第である。そういったことを考えて経営していかなければならいという問いかけが原点回帰の主たるところである。この頃にコラボレーション、アライアンスという言葉も出始めた。
 第3ステージのテーマが新創業はワンストップサービスであった。ワンストップサービスで収益拡大へである。新創業はワンストップサービスである。どの企業にも創業期があった。自分が社長になった、2代目で引き継いで社長になったときである。創業の時と現在を比較してみるとお客様の数でも資金力、技術力、設備、従業員すべてにおいて現在の方が豊であるのは間違いない。ただ創業の時の方が優れているものがあるとしたら会社経営をするに当たっての会社をこうする、従業員にはこうしてやりたいという熱い心ではないか。それに一度戻ってみようということである。企業家魂ではないか。ワンストップサービスはお客様に煩わしさ、面倒くささ、無駄な時間を如何に使わせないかということである。あなたの会社に頼むとすべて大丈夫、すべてやってくれる。すべてを引き受けられる会社にしようということである。自社ですべて出来るわけがないという人もいると思う。自社だけですべてをやる必要はない。そこでコラボレーションが出てくる。仲間を作って、企業同士のグループ化を目指して、自社でできないものはお願いする。ただ、今の自社の得意先だけは逃がしては駄目である。これを離さないようしながら進めることが一番肝心だと思う。
「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」へ進展

 昨年10月の鹿児島大会で「業態変革実践プラン−2010計画」が発表された。北海道印刷工業組合として「ワンストップサービス実践ガイドブック」と「コストダウン実践プラン」の2冊を買い、全組合員に送付した。これを読むと分かるが、優しく書いてあるというがなかなか読んでもらえない。実践ガイドブックに全国の4社の成功例が載っている。そのうちの1社が札幌の正文舎印刷である。北海道にもそういう企業がある。3月6日に道内で成功している企業の事例発表をしてもらい皆さんの役に立ちたいと考えている。従来の印刷会社は印刷物を作って納品するだけであった。それをもう一歩踏み込んで印刷付帯サービスをしようということである。
 昨年、東京都印刷工業組合では従来の「年賀状印刷承ります」のポスターの横に同じ大きさで「宛名印字します」を書いたら、かなりのものが受注できたという。4,000円で印刷していたものに印字代10,000円をプラスして14,000円の品物になった。そういうことを先駆けてやっている会社もたくさんあると思うが、東京都印刷工業組合としてやったということである。ある営業マンは老人ホーム、介護施設に出向いて何倍かの受注を取ったという例もある。発想の転換である。お年寄りで年賀状を出したいが字が書けないという人が多数いるので、そういうところを回って受注したということである。東京都文京区の印刷会社が地元である湯島・本郷の町おこしをしようということで地元のイラストレーターと組んで湯島・本郷百景というポストカードを作製し、10枚セットで1,050円で売ったら抜群に売れたという。何か大変なことをやるのだというような考えでなく、ちょっとした発想によって新たな受注ができるということである。
 アメリカの印刷工業会のPIAの会長のマイケルマーキン氏は付帯サービスの必要性を訴えて、1ドルの印刷の周りに6〜8ドルの付帯サービスがあると述べている。アメリカの印刷業界は日本より5年位先を進んでいる。そこの会長さんが言っているので間違いはないと思う。印刷物1個を納めただけでなく、それに付帯するサービスをする。DMの場合は企画して印刷して宛名を印字して封入封緘して郵便局まで持って行くということである。これだけやれば印刷物は取れるはずである。自社で宛名印字が出来なければ出来るデータ会社とコラボレーションして出せばいい。 
 我々の印刷業界は悪いといわれているが、そういった意味ではまだまだ発展の余地があるのではないか。成熟産業で印刷物も事実減っているが、そういう考えに則って行ったらまだまだ印刷産業は見捨てたものではない。業態変革推進プランおよび実践プランを作ったのは我々の仲間である全国6,700社の組合員の中から選ばれた20人である。夜も徹してディスカッションをしたとも聞いている。北海道からは花井秀勝氏が副委員長になっている。有識者というか偉い人でなく、大きい会社、小さい会社もあると思うが我々印刷に携わっている人達が集まって会話をしながら作ったものである。この中に必ずや何処かに自社に該当するヒントがあるはずであるので挑戦をしていただきたいと思う。
 大変な時期であるので印刷工業組合は一致団結して価格競争でなく、皆で協調しながら生き残りをかけて頑張っていきたいと思っている。

「業態変革実践プラン−全印工連2010計画−」
実践!業態変革 ワンストップサービスで収益拡大へ

■業態変革実践プラン−全印工連2010計画−
 全印工連は、業態変革推進プラン2008計画を提唱し、印刷業界を取り巻く環境の変化に対する数々の提言を行い、業態変革の必要性を訴え続けてきた。
 次の課題は、如何に業態変革を実践に結びつけるかである。そこで全印工連では2008計画を引き継ぐ事業として「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」をスタートした。総論としての2008計画を基に各論を導き出し、業態変革の実践を支援する事業が2010計画である。
 テーマは、「実践!業態変革 ワンストップサービスで収益拡大へ」である。今まで提唱してきた業態変革を実践に結びつけるという大きなテーマのもと、印刷を中心とした周辺領域への市場拡大と、顧客への課題解決を提供するワンストップサービスを具現化し、実践の結果として高付加価値化による業界収益構造の改善と収益拡大に結び付けて行くものである。
 変化は絶え間なく起きている。さらに加速度を増して世の中は変わっている。業態変革というテーマに卒業はない。経営者と社員が一つになり、変革への強い情熱を持ち続ける会社、挑戦する会社こそがいつの時代も成長して行ける。夢のある新しい印刷産業の姿を創るために「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」に共に取り組んで行こう。
■業態変革の意義
 業態変革の意義についてもう一度考えてみよう。業態変革の基本は環境の変化に対応して自らが変わって行くことである。「規模が大きい」からでもなく、「強い設備」があるからでもなく、環境の変化に対応できる企業、顧客が求める企業が生き残ると言われている。
■業態変革の必要性
 かつての人口増加や高度経済成長を背景とした大量生産・大量消費のビジネスモデルは通用しなくなった。印刷業が量産を前提とした印刷物製造の事業領域、即ち過去のビジネスモデルに留まっていたのでは結局は値下げ競争に陥り、その結果として一企業だけでなく産業全体が疲弊してしまうことを避けなければならない。過去の成功体験を見直し、勇気を持って新しい事業領域に漕ぎ出す時が来た。
■2008計画から2010計画へ
 今まで2008計画において数々の業界指針となる提言が行われてきたが、2008計画では「理解はしたけれども、実施はどうすればいいんだろう」という声が聞かれた。そこで全印工連は2008計画を引き継ぐ事業として「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」をスタートした。2010計画は2008計画を基に各論を導き出し、業態変革を実践するための支援事業を行う。
■実践プラン2010計画のテーマ
 「業態変革実践プラン−全印工連2010計画」のテーマは「実践!業態変革 ワンストップサービスで収益拡大へ」である。
 今まで提唱してきた業態変革を実践に結びつける「実践! 業態変革」。市場環境の変化や成長の変化に対応し、顧客が求める印刷を中心とした周辺領域への拡大と顧客への課題解決の提供。これはワンストップサービスを基本にして行こうという考え方である。高付加価値化による業界収益構造の改善と価格以外での差別化施策により収益拡大を目指す。
■ワンストップサービスの出発点は印刷付帯サービスから
 ワンストップサービスへの第一歩は印刷付帯サービスの充実である。2008計画第3ステージでは5Doorsを発表したが、その中のDoor5で「ワンストップサービスの出発点は印刷付帯サービスから」と提唱されている。先ずは「印刷物制作を中心として前後工程の印刷付帯サービスを連携させた範囲」を拡大させていこうという考え方、これが事業領域の拡大である。
■印刷業界成長の方向性
 収益拡大に向けた印刷業界の成長の方向性を考えてみよう。印刷の媒体価値の向上は技術面、生産性を含め工業としての印刷会社として当然のことであり永遠のテーマである。製造業としての印刷業は、従来からの印刷工程を中心とした合理化技術の深堀り、そして新商品の開発などにより印刷媒体価値のさらなる向上を図る必要がある。一方さらなる業界の成長は、印刷周辺領域への仕事の取組みが必要で、それは永年言われ続けているソフト化、サービス化である。繰り返しになるが、環境の変化、成長の変化に対応し、顧客が求める印刷を中心とした周辺領域への拡大と、顧客への課題解決の提供が印刷業界に求められている。従来の製造業としてのスタンスとこれからのソフト化・サービス化の両方を視野に入れた戦略の構築が大切である。それにより印刷業界の成長と顧客満足の向上が確約される。
■印刷付帯サービスへの事業領域の拡大
 アメリカの印刷業界の現状から印刷付帯サービスの可能性について検証してみることにする。アメリカの印刷業界は日本の先を進んでいて、日本の印刷業界がアメリカを追随するようなかたちになっていると言われているが、アメリカの印刷工業会(PIA)は印刷付帯サービスの必要性を訴え続けている。PIA会長のマイケル・マーキン氏は、「1ドルの印刷のまわりに6〜8ドルの付帯サービス」があると言っている。PIAの最新の調査からも印刷付帯サービスの将来性を見ることができる。売上に占める分野別伸び率をみると、従来のインキによる印刷の伸び率は2007年に0%になったのに対し、トナー/デジタル印刷は4%以上の伸び率を示している。印刷付帯サービスは安定して3%以上の伸びを示している。印刷付帯サービスは十分な可能性を示し、業界の成長を実現させる原動力となっている。
■印刷付帯サービスの成長性
 印刷付帯サービスに着目する理由としてPIAは2つの見解を述べている。1つは付帯サービスを取り込み売上減少を補うというコンセプトは印刷会社の収益性を高める。もう1つは印刷付帯サービスは印刷会社の中核的機能ではないが、しばしば顧客のニーズを取り組むことにより中核的事業そのものの付加価値向上に結びつくものである。印刷付帯サービスは売上減少を補い、収益性を高め、さらに顧客ニーズを取り込み、付加価値の向上に結びつくという見解である。
■印刷付帯サービスの可能性
 印刷付帯サービスには、印刷を中心に企画・デザイン・撮影・編集などのコンテンツ制作や光沢加工・箔押しなどの加工、配送・補完業務など印刷業に隣接するさまざまなビジネスが存在している。印刷付帯サービスには広い範囲にわたる可能性が存在している。
■ワンストップサービスとは
 印刷付帯サービスの可能性について述べてきたが、2010計画ではワンストップサービスを中心としている。印刷付帯サービスとワンストップサービスはまったく同じものではないが、印刷付帯サービスは印刷会社からの視点、ワンストップサービスはもう一歩進んで顧客の視点に立った一連のサービスと考えて行くことにする。しかし、すべてを自社でこなすのは困難である。そこで各分野で強みを持つ専門企業との適切な連携、コラボレーション、全印工連が提唱する共創ネットワークが前提となる。
■ワンストップサービスは顧客接点の改善から
 今までの印刷営業はどちらかというと印刷物を作ることに集中し、顧客が抱えている事柄に目が向いていなかった。印刷物受注の取引のことだけに頭が向いていて、顧客が印刷物を作る目的やそれに付随して考えていることへのアプローチなど顧客との取り組みをしていなかった。印刷物を納めて対価をいただくだけでは「取引」に過ぎない。もう一歩踏み込んだサービスの提供、「取組」が重要になる。「取組」とは顧客と相対するのではなく、顧客と同じ視線で顧客にとって良い結果を導き出すことである。言われたとおりに印刷する印刷会社はいくらでもある。顧客の求めているのは「取引」から「取組」のできる会社である。「取引」から「取組」へ。顧客の目標達成のために共に考え、共に悩みを共有することが大切である。
■ワンストップサービスは誰にでもできる
 ワンストップサービスは、すべての会社に取り組むチャンスがある。ワンストップサービスに会社の規模、設備、立地条件は関係ない。どんな会社でも必ずできる。全印工連が提唱している「共創ネットワーク」の考え方を中心に組合員同士がイコールパートナーとなって、さらに印刷隣接業界の専門性も利用して印刷業界を大きく広げていくべきである。
■ワンストップサービス受注の背景
 印刷物を発注する顧客は、企画、原稿作成、発注、校正、製品の受け取り、保管、発送、効果の確認、次の企画に反映と実に多くに工程を必要としている。顧客への発送のタイミングも異なるので在庫保管も必要である。発送先の顧客データは常にメンテナンスしなければならない。
 かつてと違い、必要な媒体は印刷物だけではない。インターネットやビデオもある。ネット配信にしてもパソコン向け、ケータイ向けがある。近頃は個人情報保護や環境対応にも目を向けなければならない。ますます作業は煩雑、内容は複雑多岐にわたっている。パンフレットを作るにしても派生する仕事全体の管理まで、とても目が行き届かないことが多い。
 顧客は煩雑な作業から解放されたいという気持ちを常に抱いている。そこへまとめて面倒をみてくれる会社が現れたら担当者はどう思うか。煩雑な作業を負わなくて済み、コストも削減できるはずである。ただし、このまとめて面倒をみてくれる会社は、何も印刷会社であるとは限らない。顧客は自分にメリットがもたらされるのであれば、それが広告会社だろうと制作会社、イベント会社、システム会社、IT会社、発送会社だろうと一向に構わない。
■ワンストップサービスの対象
 ワンストップサービスの対象は特定の企業や団体ばかりではない。例えば、地元行政と商店街、大学などと印刷会社が組んで、町おこしのイベント開催やモバイルへの情報配信、アンケートの実施・回収・分析などを請け負った例などはある。地域活性化という大きなテーマを考えた時、ワンストップサービスは欠かせないものと言える。しかも、あらゆる場面で必ず印刷物が発生する。印刷物用のデータはポスター、パンフレット、看板、ノベルティグッズ、ホームページなどに転用できるので、印刷会社が付帯サービスに関わるのが最も効率が良いケースが多い。
■ワンストップサービスの実践
 価格だけを武器に印刷物を受注したり、製品を納めたら仕事は完了と考える印刷会社は、目の前の収益拡大のチャンスを自ら取り逃がしている。経営者から社員まで全員が、自社との取引先の関係を一度総点検することが必要である。
 納めた印刷物がどのように利用されたのか、印刷物にどんな効果を求めているのかを考えてほしい。ワンストップサービスを展開するうえでの印刷会社の強みは、「印刷」を知っていることにほかならない。いくらIT会社、制作会社が努力してもプロの印刷・加工をものにすることはなかなか出来ない。すべて外注するにしても多種多様な印刷を取り仕切るのは難しい。その点、印刷会社であれば独自のノウハウやネットワークが必ず活かされる。
 制作会社やIT会社より印刷会社がセールスプロモーションやデザイン、映像、Web、郵便仕分け、コールセンター業務などに進出する方が障壁はずっと低いと言える。すべて自社で手がけることは不可能であるので、そこは各分野の専門企業と提携して行くことになる。
■顧客の課題解決
 ワンストップサービスの展開・推進は大変重要であるが、ワンストップサービスにより、顧客の課題解決を提供することがさらに重要になる。顧客の期待をかたちにする。顧客が考えていることを効果的に実現し、顧客視点で最適な製品・サービスを提供する。これが課題解決、ソリューションの提供である。顧客の悩みや課題を解決し、選ばれる印刷会社になることである。


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