印刷燦燦
好景気よし、不景気も又更によし

理事・札幌副支部長 中林 昭人
北海道交通印刷株式会社代表取締役

 本を読んでも、新聞を見ても読めない漢字、意味の解らない言葉が多くて誠に恥ずかしい限りである。そこで遅ればせながら電子辞書を購入した。常に身近に置くようにしているが、決して漢字検定試験に挑戦する気もないし、国会答弁書を読む立場でもない。ちゃんと文意を理解する為には読めなくては……。
 そんな中でよく耳にしながら、解っているようで良く解っていない言葉があった。「パンドラの箱」早速調べてみた。決して開けてはいけないという箱をパンドラが好奇心から開けてしまい、この世にありとあらゆる災難・苦悩が飛び出した。急いで蓋を閉めたので希望だけが箱の中に残ったと言うお話しで、禁断の扉を開く事・予期せぬ困難を生み出す源などと言う意。ここまでは何となく解っていたのだが、パンドラって誰?希望が残ったってどういうことだ?なんだかよくわからない。そこで更に調べる事に。
 話はギリシャ神話の世界となる。天空の神「ゼウス」は鍛冶の神「へパイストス」に命じて、女神に似せた美しい人間の女性を作らせ、この女性に知恵と織物の技術、男を悩ます美貌と魅力、音楽の才能と治療の才能、偽り・好奇心など色々な才能を与えた。この女性こそが「パンドラ」(あらゆる贈り物を与えられたと言う意味)である。
 「ゼウス」は人間を作った神「プロメテウス」を好ましく思っていなかった。それは人間と神が犠牲獣の配分を決めるときに人間に神々を偽るようなことをさせた事、そして罰として人間から「火」を取り上げたにも拘わらず「プロメテウス」が再び人間に「火」を返した事などで「ゼウス」は「プロメテウス」を岩山に縛りつけ鷲に肝臓を食わせ続ける苦役に処することで罰したが、しかし恨みはなかなか消えなかった。そこで一計をめぐらせ、人間界を罰する為にこの「パンドラ」を作らせたのである。「ゼウス」は「プロメテウス」の双子の弟「エビメテウス」のところに花嫁として「パンドラ」を連れて行かせた。「エビメテウス」は兄から「ゼウス」の言うことに耳を傾けてはならないし、ましてや贈り物などは決して受け取ってはならないと言われていたが、「パンドラ」の美しさ、魅力に吾を忘れて妻に迎えてしまった。「ゼウス」は「パンドラ」に“決して開けてはいけない” と言う事を告げて一つの箱を持たせた。この箱には、この世のありとあらゆる災難・苦悩が入っていた。「ゼウス」は自らではなく「パンドラ」によって人間界に災難・苦悩をもたらそうと考えたのである。「パンドラ」は「ゼウス」の思惑通り、好奇心から箱を開けてしまう。一瞬にしてありとあらゆる災難・苦悩が世界に広がってしまった。慌てて蓋を閉めたが箱の中に残ったのは「未来を全て分かってしまう災い」で、人間は希望を持つことだけは失わずに済んだと言う事のようです。我々はどんな災難・苦悩に見舞われようと「希望」だけは失うことなく生きる幸せを有しているのです。
 今の世の中の情勢を見るに、世界中がこれまでに経験したことのない災難・苦悩に苛まれて居ります。マネーゲームの破綻が発端となった世界同時不況。日本の景気をこれまで支えてきた自動車業界・家電業界をはじめとする輸出産業の軒並み赤字転落。上場企業の3社に1社が減配・無配とか。大手企業の大幅な人員整理により市中には失業者が増大し、個人消費は益々冷え込む事に。あちこちで在庫減らしの生産調整が始まっている。日本製紙の白老工場も3月中に20日程度の操業休止をするとか。印刷業界は一体どうなるのだろう。誰しもがその様に心配している中、永田町では国民の生活不安そっちのけで相変らず、首の取りっこ、足の引っ張り合い。重箱の隅の突っ突き合いで、夢も希望もなくなる思いである。
 経営者が夢と希望をなくしたらおしまいです。こんなときこそ同じ悩みを抱える者同士「組合」という場を介してお互いの現状を情報交換しながら、どうすればこの苦境を超えることが出来るか、協力関係を結ぶ事で、協調関係を作ることで、手を携える事でどんな希望を、どんな夢を描けるか?今こそ業態変革・コラボレーションを考えましょう。どうせなら組合員全員で、でっかい希望と夢をこの大不況というカンバスに描こうでは有りませんか。
 経営の神様 松下幸之助翁も「好景気よし、不景気も又更によし」と言っておられます「更によし」です。この神様のおっしゃる事を信じて頑張りましょう。

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