第28回北海道情報・印刷文化典十勝大会特別講演
「社会の変化はますます加速度化            
2008業態変革推進プランから2010業態変革実践プランへ
            ワンストップサービスで収益拡大」
全日本印刷工業組合連合会 会長 水 上 光 啓 氏
 第28回北海道情報・印刷文化典十勝大会本大会が8月9日午後2時からとかちプラザで開催され、水上光啓全日本印刷工業組合連合会会長による「社会の変化はますます加速度化 2008業態変革推進プランから2010業態変革実践プランへ ワンストップサービスで収益拡大」をテーマに特別講演が行われました。(本紙第628号既報)
(文責:編集部)
 講演要旨をご紹介します。                     

業態変革推進プランを読んでください
水上 光啓氏
水上 光啓氏
 今日の私の役割は3人の意見発表を聞いて講評をしなさいということであるが、そんなことできる訳がない。3人の素晴らしい話を真剣に聞かせてもらった。その意見を聞いていると業態変革そのものが集約されていて私が今さら話すことは何もない。3人の我々の仲間が話したことを少し振り返ってみることにする。最初の中林さん、設備の有効活用・真のコラボレーション、共創ネットワークと言っていた。新しい価値の創造、そして業界の標準、そのための教育。2番目の松井さん、松井さんはきっと昭和26年生まれと思う。25年にお母さんのお腹の中でこの大会を聞いたということである。私も同じである。その頃、東京で母のお腹の中にいた。思いは皆さん全く変わらない。松井さんもワンストップサービスで新しい挑戦をしていこうという。そのとおりである。業態変革は難しいと言われたがとんでもない。読んでみたら簡単であった。皆さんに読んでほしい。積読だけでなく通読してほしい。折角仲間が仲間の言葉で作ったのだから是非通読してほしい。読まないのはもったいないと思う。ワンストップサービス、そして社会が大変革していく。競争が厳しい。だからといってモラルのないコスト競争をしてはいけない。そこには競争を避けるための差別化、独自力が必要ではないか。皆さんは北海道の人である。北海道を作ってきた。熱き思いをもう一度持とう。こういうときほど熱き思いを持っていくと何とかなるものである。冷めては駄目である。とにかく皆さんの原点は熱き思いを持つことである。ここには経営者、経営幹部の方が来ている。全員が熱き思いを持つことである。それが全てのスタートである。さらには第2ステージの原点回帰、悩んだら業態変革推進プランの第2ステージを見てほしい。原点回帰、自社の悩みを見てみると結構でてくる。1回やったからいいという人がいる。そんな人は駄目である。半年経つと社会の変化で変わってしまう。だったらもう一回見てみると新たな自社がまた見えてくるような気がする。是非、第2ステージで原点回帰をしてほしいと思う。さらにこの方は怖い、会長を超えて行ってしまった。自社の原点回帰でない。業界の原点回帰もしてくれと言われているので、ぐさっと来た。それは私の責任で引き受けたいと思う。第3ステージは、社会から求められる企業になるである。我々はお客様のところへペコペコ頭を下げていく。そうではなく向こうから仕事をやってといわれるようになったらどんなにかすばらしいではないか。本当にお客様の役に立つこと、そのキーワードがワンストップサービスである。新創業の気概でチャレンジしよう。3番目の高原さん、原価意識の高揚、モラル。今まさに組合に必要なものはモラルである。組合の機能は何か。連帯は凄く大切である。これだけの人がいる連帯。ただ連帯にはモラルというキーワードがある。一人でもモラルを失うと水は低い方に流れる。価格も低い方に流れる。資材が上がっているのだからきちんと転嫁しよう。値上げではない。上がった分を貰っても当然である。そのためにはモラルをもって連帯というキーワードで進んで行こう。是非そんなことをやっていきたい。積読から通読した方がいる。皆さんこれである。会社にあると思うので読んでほしい。第1ステージから第3ステージまである。さらに第2ステージは東京都印刷工業組合では難しいという人がいたらと解説して易しいバージョンまで作った。必要なら声をかけてほしい。いつでも皆さんに販売する。一緒に勉強しよう。読んでもらえば終わりである。ただ皆さん実行するのは難しい。誰だって新しいチャレンジは難しいに決まっている。先達がこれまで作ってきた印刷産業をもっともっと永遠に続けようではないか。今3人の意見はまさに業態変革推進プランを読んだ結論だと思う。
業態変革実践プランを鹿児島大会で発表
 今年は、業態変革推進プランの総仕上げである。私も浅野会長の下で一員として真剣に作ってきた。それにはキーワードが入っている。変化というのは世の中の流れの中に一緒にふらふらとついていくことである。変革というのは自らの意志で自らの心で変える。これは結構違う。企業のありようを自らの力で変えていこうというのが業態変革である。こんなに変化しているのだから相当情熱がいる。情熱を出すのは経営者である。経営者は給料が高いのだから情熱を出そうではないか。とにかくチャレンジをすることである。
 次に業態変革実践プランを出してくれという人がいるが、私は会長になってやっと2ヵ月たっただけでありまだ出来ない。業態変革実践プランのより分かり易いきめ細かいプランは、今年10月の全印工連の鹿児島大会に向けて業態変革推進企画室の仲間が真剣に作っている。北海道は一番遠いが皆さんお土産付けて帰すので是非鹿児島に来てほしい。交通費なんて安いものにする。鹿児島で実践プランを披露するので来てほしい。ワンストップワービスで収益拡大。よくワンストップサービスは難しいというが、皆さんワンストップサービスなんて難しくない。
武器のない戦いは価格破壊
 世の中で人口は減っていく。先ほどの挨拶でITを敵にしないと言ったが、情報検索などの面ではIT化の影響もゼロではない。そうするとどう考えても印刷需要は残念ながらこれから増えることはない。印刷需要は少し減っていく。その中で従来と同じことを同じように同じ得意先と同じ仕事をやっていたら会社はどうなるか。押して知るべしである。それで良ければそれでもいい。私は嫌である。業界全体がもっともっと活力あるようにしなければいけない。そのためには新しいチャレンジをしなければいけない。2つあると思う。新規な得意先に行く。武器なくして新規な得意先に行って何ができるか。本当にモラルなき戦いである。武器無しに行ったら価格競争しかない。それはもうやめよう。そうではなく既存の得意先を大事にしよう。私たちはなんだかんだ言ってもコアは印刷である。しかし、その印刷が縮んでくるのが事実である。そうであったらコアの印刷を核にして、いつでもお客さんの仕事を見ていたらコアの周りが見えるはずである。印刷を核にして少しでも得意な分野を少しずつ広げていくということがワンストップサービスの始まりである。見えるところから始めよう。全部やれるなんて思っていない。一番得意なところから始めよう。印刷の中から見える領域を少しでも広げていこうということがワンストップサービスの始まりだと思う。皆さんは一体何ができるのか、今何をしなければならないのか。これは先ほどの意見発表にもあったが、お客様から選ばれるような会社にならなくてはいけない。これが全てである。これは決して規模の大小だけの問題ではないと思う。お客様は規模の大小で選ぶのか。それは違う。お客様にとって最適なビジネスを提供してくれる会社が選ばれるのである。現在、選ばれているとしたら多分お客様に最適なビジネスを提供している会社である。選ばれないとしたらお客様に最適なビジネスを提供していないということである。是非、提供している方も提供していない方も業態変革推進プランの第2ステージで自社の原点を見てみてほしい。より強み弱みが分かるはずである。見てみて新しい方向を決めればいい。
変えるリスクと変えないリスク
 変えるリスクと変えないリスクと世の中には2つのリスクがあるはずである。どちらをとるか。再三言ってきたが変えるのは大変である。今これだけ社会が変化している中で皆さんはどうか。変えないで済むのか。変えるリスクと変えないリスク。どう考えても変えない方がリスクが大きい。そうしたら我々経営者は変えるリスクを取らざるを得ない。これが業態変革の第1歩である。変えなければ駄目である。もちろん会社というものは長年いろいろなシステムを作ってきた。それを一朝一夕に変えるということは並大抵のことではない。しかし変えなければ生きていけない。それだけ社会が変わっている。それが業態変革である。ただこれは重要である。では経営者の皆さん、俺、変える気になったよ、行こうといって振り向いたら誰もいなかったら大変である。やはり変えるのは大変である。経営者1人では行くことはできない。社員が一緒に経営者と方向性を合わせてチャレンジをしなければだめだと思う。その優先課題は、やはりこれからは教育ということが重要である。もう間に合わないと言う人がよくいる。間に合う間に合わないではない。思ったらやり続けなければいけない。それが教育である。今居る社員の教育のほか、もちろん新しい社員を採るという努力もあるかも知れない。とにかく思ったら教育を始めよう。いろいろな教育がある。組合も手伝っている。皆さん一緒に勉強しよう。すべての差別化の原点は教育だと思う。会社って一体何だろう。皆さん改めてここで考えてみようではないか。会社という組織は経営者と社員が約束しあう。経営者と社員がきちんと約束しているか。どんな約束といわれるかもしれないが、今年1年どういう仕事をする。当社はどういう方向に向かって新しいチャレンジをして、会社はそういう方向に向かって進むということを社員の前で約束しなければいけない。ただ頑張ろうでは会社の進む方向が分からないのだから経営者は責任放棄である。経営者は先ず社会の変化をきちんと認識してどっちの方向に行くということを決める。これは経営者の責任だと思う。社員の皆さんも同じである。後ろ向きの言い訳を言っている時代でない。社会は言い訳を聞いてくれない。聞いているうちに社会はどんどん進んでいる。だから後ろ向きの言い訳は一切やめて、新しいチャレンジをする。自分の責任でやるということを約束する。お互いに約束するのが会社である。是非、きちんと約束をして実行すれば会社は必ず変化していく。これは経営者の皆さんも社員の皆さんもきちんと約束をしなければいけない。実行は大変だと思う。
業態変革の3つのステージ
 業態変革推進プランは、第1ステージのテーマが業態変革ミニマムであった。僅か4年前である。まず5Sから始めよう。先ずパソコンから始めようであった。もうそんなこと格好が悪くて書けない。それくらい世の中はもの凄く変化していて、パソコンは当たり前になってしまった。それは社会が変化しているのだからしょうがない。我々が一緒に社会の変化の中で残るためには対応しなければならない。それが僅か4年前である。これが我々の第1ステージであった。そして次のステップに行った。3年前に業態変革の第2ステージである。まさに原点回帰をしてみよう。自社の強み弱みをきちんと見極めてみよう。これが原点回帰である。7keysという7つのkeyを作った。まさに原点をきちんと見つめることによって収益性と成長性、生産性をもう一度見極めてみよう。こんなkeyがあったと思う。皆さん是非会社に帰って確認してほしい。なければ本部に問い合わせてほしい。値段は忘れたが1冊で自社方向性が見えたら安いものである。経営戦略、営業戦略、生産戦略、IT基盤整備、環境対応、安全・安心、ソフト化・サービス化の7つのkeyがあった。コラボレーションという話もあった。是非それぞれについて自社の何が得意で不得意かを見極めて、そこから先は皆さんがそれぞれ考える。自社の強み弱みは明確に分かる。そうすると弱みを補完する戦略を取る会社もある。強みをさらに強くしていく会社もある。それが皆さんが経営をしている方向である。組合が提供するのはロードマップである。業態変革の3番目、第3ステージがあった。第3ステージはまさに新創業はワンストップサービスである。5つのdoorがあった。お客様のことを真剣に考える体質、社会の大変化を認識すること、より競争力を強める、独自力を発揮する、新創業・ワンストップサービス5つのdoorである。業態変革を成し遂げる会社とは一体何なのだろうか。どうやったら成し遂げられるのか。
ワンストップサービスで収益拡大
 ここは北海道、十勝である。まさに印刷は地場産業である。何処に行っても基本的には地場産業だと思う。地域で生まれて、地域に深く根を張って、地域に貢献する。印刷の基本的な印刷産業としての原点回帰をするとしたらここに来るような気がする。これだけ大きな社会変化の中でも所謂100年以上の歴史を越える老舗といわれる印刷会社が全国に150社もある。これだけ印刷は根強い産業である。しかし変化があった。戦後63年経った。北海道は屯田兵からみると随分経っている。戦後だけとってもどうか。こんな変化を皆さんは全部乗り越えてきたではないか。今のITの変化くらいはどうってことはない。我々が英知を集めていけば十分乗り越えていけると思う。よく大変な危機だという人もいる。確かに今、危機なのかもしれない。これは言葉の遊びではないが、危機という文字を見てほしい。半分は危険という文字だが、半分は機会と書いてある。チャンスである。危機というと全部大変なことになってしまいそうであるが、危険とチャンスが両方あるのが今の社会だと思わないか。経営者の皆さん、こんな言葉がある。一国は一人により興り一人によって滅びる。今こういう厳しい環境の中で経営者の皆さんに課せられた責任は大きいと思う。これは全部経営者の責任である。ではどうするのか。情熱を持って行こうの一言である。熱き思いである。新創業をするための熱き思いを持ってチャレンジする。これがまさに原点ではないか。ワンストップサービスで収益拡大をする。印刷というコアのビジネスがだんだん縮まってくるとそこだけでは従来と同じ収益を確保することはできない。従来と同じ収益を確保するためには領域を拡大しなければならない。さらに収益を拡大するためには一つ一つ印刷をコアにして収益を拡大しいく。それがワンストップサービスの原点だと私たちは考えている。
印刷をコアに領域拡大
 ワンストップサービスとは何か。従来印刷会社は印刷物を作れば良かった。我社もそうであった。印刷物を作ってお客様に納めてくると、営業が社長、印刷物納めてきましたと言う。ご苦労さん。これで終わっていた。しかし、お客さんの立場で考えてみようではないか。私たちは作るのは大好きである。お客さんは作るだけが目的か。違うのではないか。印刷会社に印刷を頼んだお客さんの立場に立ってみよう。お客さんは、考えて、作って、使うという3つの行為がある。私たちはその行為の一部分しかやってこなかった。作ることだけで満足していた。お客さんの立場に立ったら根本的に変わってくるような気がする。ワンストップサービスは、最初にコアを少しでも広げていけばいい。ただお客さんの立場になると、一つの印刷物の例をとると工程は長い。これをそれぞれ一つ一つの会社に頼んでいたら大変である。企画を企画会社に頼む。それも1社だけに頼むわけでない。何社にも頼んで最適な会社を選ぶ。何社にも同じ見積もりを取って1社を選ぶ。お客さんは凄く大変である。そうであれば手伝うことを考える。全部やれとは言わない。できることを1つでもやればいい。是非一つでもやらなければならないと思う。本当にお客様からみると印刷発注に伴う煩雑さは大変である。それを是非お手伝いしようではないか。さらにもっと厳しく言うと、良い品質、これは当たり前である。お客さんの満足は、製品の売上げを上げてほしいというところまで行く。広告宣伝、販売促進、印刷の効果的な利用法までトータルで印刷会社でやってほしいという要求がある。できないと言う人が必ずいる。できないと思うが本当はできる。ワンストップサービスは全てをやる必要はない。印刷の領域が縮まるから少しでも領域の拡大をやっていこうというのがワンストプサービスの原点である。全工程、全領域をカバーする必要は全くない。ともすると俺、関係ないよ、力のある印刷会社の独断上であるという。そんなことは絶対にない。ワンストップサービスは企業の規模、営業品目、立地条件にかかわらず、すべての印刷会社に可能性がある。名刺一つとってもそうである。ただお客さんから名刺を刷ってと受ける。これはただの印刷屋さんである。それならばお客様のデータを少しパソコンに取っておいて、そのお客さんは3ヵ月に一度注文がくるのであれば2ヵ月半たったらメールでそろそろ名刺が切れていませんか。こんなことは当たり前である。メールがだめならFAXで名刺が切れていませんか。そんなことをすることで仕事が受身ではなく、我々が一歩ずつ働きかける。それで仕事の輪が広がってくる。これがワンストプサービスの始まりのような気がしないか。その輪が広がってくれば大きな繋がりになってくるような気がしてならない。まさに新創業への戦略である。第3ステージには5つのdoorがある。最後の5番目のdoorは、新創業はワンストップサービスである。出発点は一つ一つの領域を少しずつ拡大することである。もちろん最後はお客さんの望む全てができたらいい。そのくらい夢を持とうではないか。我々印刷産業は印刷をコアにして領域を拡大していくために夢を持ってやろうではないか。もうやっているという会社であったらいい。どんどんやろう。全てをやっているわけではないと思う。1つの仕事をやったら2つにしよう。2つやったら3つにしよう。そして領域拡大をしていく。これが仕事のような気がしてならない。
印刷業のコンビニ化
 ワンストップサービス、視点を変えて話をする。世の中に最初は小売店がたくさんあった。それが百貨店になった。そしてスーパーになった。コンビニになった。何故か。お客さんの立場になってみれば1箇所で買物をしたらどんなに楽か。そういうことではないか。取り敢えずこれからはお客さんの立場になって考えてほしい。お客さんの考えで立場にたてば物が見えてくる。残念だが自分の機械に合わせて印刷をする時代は終わった。お客様の望むことを我々は形にしなければならない。そうすると世の中の基本が百貨店、スーパー、コンビニになった。何でも揃う。業態変革も同じことである。お客様の立場にたってみればより便利で、安全、安心な会社に発注したい。当たり前のことではないか。是非我々は今後もワンストップサービスを目指してチャレンジをしていきたい。ある意味では印刷業のコンビニ化でもいいのではないか。皆さんやるべきことはたくさんある。この続きの実践プランは是非鹿児島大会を見てほしい。鹿児島大会を見る前に悩んだら先ず読んでほしい。読んでみれば必ず一つの解決策が出ると思う。最後に、皆さん、我々は大きな産業にまだ十分に変化ができる。やりようはあると私は確信している。一緒に勉強して印刷産業で良かったというように頑張っていきたいと思う。

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