第10回 
「事業の終了報告等」

 昨年4月より実施しておりました「70歳まで働ける企業」創出事業の1つとして、高年齢者雇用に関連する原稿を掲載してまいりましたが、早いもので、今回が最終号となりました。
 ご存知のとおり、少子高齢化が急速に進展している中、「団塊の世代」が60歳代に達することで、より一層の労働力人口の減少が懸念される状況となっています。このような背景があり本組合では、北海道労働局より委託を受けて「70歳まで働ける企業」の職場環境づくりを目指して事業を実施して参りました。
 そのため事業の推進活動として業務繁忙にもかかわらず組合員企業のみなさまのご協力をいただきながら、アンケート調査および組合員企業の個別相談会の実施、さらにセミナー等を開催することができました。
 組合員企業の皆さまと取り組んで参りましたこの事業も、無事終了することができましたことを深く御礼申し上げます。
 この事業の終了に当たって想うことは、プロジェクト会議の開始当初は、企業の活力といった面から考えると「70歳まで働ける企業」創出事業が受け入れていただけるのだろうかと、アドバイザーとしての使命と同様に不安もありました。
 しかし、この事業が進むにつれてアンケート調査や企業の個別相談会を実施してみて、企業規模が小さいほど、年齢区分という枠が、実際には無いに等しい状況であることが見えてきました。
 実態としては、企業にとって必要としている仕事、つまり高齢になっても企業に貢献することができる人は既に定年が廃止されているようなもので、それほど中小企業の中では、60歳以降の従業員はもちろんのこと、65歳以降の従業員も活躍していることは珍しいことではなかったのです。
 見方を変えると、企業規模が小さい企業ほど、企業にとって必要な働き手の確保が難しく、労働力構造が大きく変化している現在、大企業より先に対応せざるを得ない状況にあると思われます。
 ただし、これが企業の中での「制度導入」となると別物です。リスク管理は当然ですし、初回のアンケート調査の結果が示すように「65歳以上の定年引上げ」と「定年廃止」は雇用確保導入済み39事業所中7事業所に留まり、再雇用などの継続雇用制度が主流となっているのが現状です。
 そこで、今後取組んでいかなければならない課題としては、やはり高年齢者の定年によって深刻化する労働力不足による労働力の確保が優先課題となるでしょう。
 これまでの、企業が必要とする者として選ばれた高年齢者の雇用継続から、雇用継続を望む高年齢者全員をいかに活用することができるかの仕組みづくりが重要となってきます。
 そのためには、コストアップを上回る高年齢者の企業貢献が求められることは言うまでもなく、企業としては、年齢や性別等の区分を撤廃し「働きやすい職場」、「働きがいのある職場」の再構築を図ることが必要となってきています。
 例えば、従業員が「企業の目的」、「上司が指示した内容」が理解できない、「社内で相談できる人がいない」など、職業能力があっても社内コミュニケーションがうまくとれない等の理由、また、30歳代以降の社員になりますと賃金に対する不満などの理由が、人材の流失に繋がっています。
 結論として「高年齢者雇用」の活用とは、高齢者のみならず、すべての従業員がやりがいを感じ、活かされる人事処遇制度づくりを推進していくことに他ならないことを、この事業を通して強く感じました。
 この事業は終了いたしましたが、組合員企業の皆様が今後も先を見据えた人事処遇制度作りを検討されることを期待いたします。
小松社会保険労務士事務所 社会保険労務士 小松勢津子

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