第7回 
『雇用確保措置導入に向けての諸規程整備』

規程整備の必要性

 社員教育を何より大切にし、内外から信頼の厚い社長さんがいます。
 この社長さんの会社は、社員を大切にしているので、利益の割には人件費の占める割合が高いという印象があります。
 昨年、この会社の創業当時から社長を支えてきた役員から次のような相談を受けました。
 「雇用延長等が義務化されたこともあり、就業規則等の改定・整備が必要です。」と、社長に提案したところ、「今は必要ないだろう」と言われ、社員にも説明がつかなくなったという相談を受けました。
 後日、社長さんに就業規則や諸規程の改定・整備が、経営上の労働トラブル回避や解決のための判断基準として機能することや、50歳代社員の定年後の不安解消を図り仕事に集中してもらえる雇用環境整備の必要性を説明したところ、社長さんの理解もいただき、その後、就業基規則及び諸規程の見直しができました。
 今回は、「再雇用規程」を中心に組織秩序維持、活性化に関連する諸規程を確認してみましょう!(第3回に掲載した「就業規則に再雇用制度を規定する場合」は省略します。第3回掲載にて参照願います。)
継続雇用制度(再雇用制度)の導入と諸規程整備のポイント
○ 60歳に達する労働者がいない会社
 「改正高年齢者雇用安定法」では、当分の間、60歳に達する労働者がいない企業であっても、65歳までの定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じなければなりません。
 その措置を就業規則や諸規程等で労働者に周知する必要があります。
 労働者が安心して働ける環境を整備することで、労働意欲が沸き、能力が発揮できることに繋がります。
○ 「再雇用規程」等で定める主なチェック事項
1「再雇用の申出」…  [1]  定年後の再雇用希望の確認について、いつまでに申し出るのか事前にルールを定め「再雇用希望確認書」等を書式化し、その手順を定める
[2]  会社は「再雇用希望確認書」等の申請に基づき職種、勤務時間、賃金等について個別に労働契約を締結する旨を定める。
2「働き方の区分」…  [1]  雇用形態(フルタイム・短時間勤務)や休日等の選択基準を定める。
[2]  再雇用者の雇用期間を定める場合は「雇用期間は1ヵ年とする。但し、雇用期間を毎年更新することにより満65歳迄雇用する」等を参考に実態に則して定める。
3「賃金・賞与等」…  [1]  賃金の支払形態(時間給・月給制)や諸手当及び昇給の有無を定める。
[2]  再雇用後の賃金基準が予め決定している場合は、定年到達時の何割以下等の基準を定め、それ以外は各個別の締結とする旨を定める。
[3]  再雇用者の退職金について「支給する、しない」等を定める。
4「その他の事項」…  [1]  再雇用者の年次有給休暇や特別休暇等について定める。
[2]  再雇用者の解雇事由や退職事由等についても定める。
ワンポイント      〜定年前から開始したいもう1つの整備〜
 若年労働者の減少に伴い、これまで以上に高年齢労働者の活用が欠かせません。再雇用希望者は、生産性を高めるために、早期に自らの能力開発の必要性を感じています。今後、企業ではどんな能力を必要としているのかを示し、社員のキャリア形成を支援したいものです。
小松社会保険労務士事務所 社会保険労務士 小松勢津子

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