「70歳まで働ける企業」送出事業
第6回 
『雇用確保措置導入に伴う
賃金設計等』

 社会的ニーズを背景に「雇用確保措置導入」が既にスタートしています。企業では、大なり小なり課題を含みながらも動き出したのです。
 高年齢者雇用に関する相談の中で、賃金関連の相談が全体の半数以上を占め、今後も同じ傾向が続くものと思われます。
 今回、賃金設計を考えるに当たり、本来であれば60歳以降という年齢区分ではなくその人の職務や貢献度に見合った賃金処遇を求めたいところです。ところが、今も年功的な賃金制度を採用している企業が実際には多く見られます。
 使用者は、人件費が上昇することを懸念し、定年後は減額した賃金制度を検討せざるを得ない状況が伺えます。
 このような現状を踏まえ、総体的に利用できそうな公的給付「賃金・年金・給付金」を活用した賃金設計に絞って事例を確認してみることにしました。
《ケ ー ス》 Bさん59歳、給与40万円、賞与年間60万円、年金見込額1カ月10万円(64歳まで)
34年間勤務し、被扶養者である妻56歳と二人暮らし。
会社は、65歳までの再雇用制度を導入している。年収は原則60歳到達時の6割程度
《相 談 内 容》 60歳以降再雇用された者には、給与以外に年金と給付金が出るって本当ですか?
◇◆◇60歳以降の給与が下がると公的給付が出るのか◇◆◇
(1) ハローワークから65歳まで支給される高年齢雇用継続給付!
 原則として給与が60歳到達時点に比べて75%未満に低下した場合に支給されます。Bさんの給与が4割減額となればその月に支払われた給与の15%相当額が支給されます。
 次にBさんが34年勤務(雇用保険加入)していますので、勤続5年要件を満たします。また仮に前職から退職後1年以内に再就職したのであれば「勤続5年」要件の判断では通算されます。但し、基本手当等を受けた場合を除きます。
 その他留意点では暦月1日から末日まで雇用保険加入者でなければその月は支給されません。また上限があります。例えば給与100万円が60万円に低下した兼務役員等は、更に減額しなければ該当になりません。
(2) 給与や賞与を高くすると在職老齢年金が減るってホント!
 厚生年金受給資格者のBさんが、フルタイムに近い状態(社会保険加入基準の勤務日数や労働時間を満たしている)で働いた場合、原則として給与(標準報酬月額)等に応じて年金(月10万円)が減額されます。
 この制度は給与等が多いほど年金が減るしくみです。その場合の減額基準は、給与等と年金の1月合計(総報酬月額相当額)が28万円を超えたときに減額となります。しかも複雑なことにハローワークから出る給付金を受給すると更に年金の減額(標準報酬月額6%上限)調整が行われるのです。
(3) 再雇用制度のもと労使合意に基づき運用するために!
 給与等が変わると給付金・年金受給額もその都度変わります。そこでできる限りシンプルに運用を望むなら賞与や諸手当等全て含めた年俸を毎月給与で分割し支払います。
ワンポイント
 この制度は前月号での記載どおり、社会保険に加入できない人は除きます。また、制度を上手く活用するには賃金シュミュレーションで最適賃金を選択するとよいでしょう。
小松社会保険労務士事務所 社会保険労務士 小松勢津子

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