全印工連の事業概要について
 平成18年度第3回理事会(1月10日開催)に、武石三平全日本印刷工業組合連合会専務理事が来賓として出席され、全印工連の事業概要について説明が行われた。

全印工連の事業概要について
全日本印刷工業組合連合会
専務理事 武 石 三 平 氏

工業統計に見る印刷業
 私ども印刷産業界は、どういう状況なのかということを最初に理解をいただきたいということで、工業統計の数字を資料として入れてある。2年前の平成17年の数字になるが、工業統計の数字は2年ぐらい後出しで出てくる。昨年の9月に数字が発表された。印刷・同関連業ということで速報値が出ている。実際の確定値になるとまた数字が変わると思うが、おおよその傾向がこれで掴めると思っている。直近の5年間の数字を書かせてもらった。事業所の数が平成12年(2000年)は40,000事業所があった。それが平成17年(2005年)には32,000社ほどにマイナスになった。数としては8,000社ほどの減ということである。これは事業所の数ということであり1社で何箇所も工場を持っていればその数がカウントされるので、企業の数としてはもう少し少なくなるが、大体8,000社ほど事業所の数がこの5年間で減ったということである。
 先ほど、北海道の組合員の加入、脱退の報告があったが、全国的な傾向で、まだ組合員の数が減少しているという状況が続いている。アウトサイダーを含めてこの5年間で8,000社減ったということである。出荷額は売上高に置き換えても結構だが、1兆円売上げが減っている。8,000社減って、売上げでは1兆円減ったという数字が出ている。これは何も印刷産業だけではない。大多数の製造業がこの5年間、事業所の数を減らしてきている。そういう意味で、製造業からソフトサービス産業へシフトしているというようなことが言えると思っている。数が減っている中で、1事業所平均の売上げでみると売上げは増えている。当然、事業所の数が減って売上げも減っているが、逆に1事業所あたりの売上げは増えてきているという結果が出ている。
 参考にインキ、紙の出荷の販売量を記載した。印刷・同関連業では出荷額が1兆円減ったが、インキ、紙の販売量では減っていない。微減はしているが、印刷・同関連業の減少と比べると僅かな数字しか減っていないということである。勿論、金額と出荷量ということであるので、単位が違うので一概には言えないが、この大きな理由は何かということになると、一つは価格競争が大変厳しくなってきている。値段を下げてきているということだと言われている。インキも紙も5年前とそう変わりはないということになると、私ども印刷会社が自ら値段を下げて料金競争に走ってきたので、出荷額は1兆円も減ったということだろうと言われている。
超少子化時代の到来
 こういう中で、私どもが今までと同じスタイルで仕事をやっていけるかということを是非考えてほしいと思っている。おそらく、まだ数は減って来るだろうし、出荷額もまだ減っていくだろうと思っている。紙メディアからいろいろなメディアがどんどん出てきた。これは一つの現れかもしれないが、そういう中で私どもが新しいスタイルを考えていかないと、お客様から選ばれなくなるということが出てくるかもしれない。
 特に大きな要因としては、一昨年来いわれているが人口の減少が2005年から数字の上で出てきた。白書の中でも超少子化ということばが使われている。市場がどんどん小さくなっている。そういう中で、私どもは今までと同じような商売のやり方をやっていては、果たして、これからどの程度、商売を続けられるのかということの大変な危惧がある。
 3人以下の推計を含む統計では8,000事業所が減って、1兆円売上げがマイナスであるが、10人以上の事業所の統計では、そう減っていない。事業所の数では1,200社しか減っていないし、出荷額では7,000億円の減である。ということは9人以下の事業所が減って、売上げも減らしているということだろうと思っている。
 全印工連組合員数の推移では、この5年間で約1,700社の組合員が脱退をされ、現在7,745社という数字になっている。1社平均の従業員の数は若干ではあるが増えてきている。組合員の10人以上の企業では712社(17%)減となっている。これからもまだ脱退あるいは印刷業をやめるところも出てくると思う。
業態変革プランの誕生
 そんな中で全印工連では3年前から業態変革ということを提唱している。2008年までに業態変革を進めていこうということで香川大会で業態変革推進プランを発表した。一昨年の新潟大会で第2ステージを発表し、原点回帰というテーマを掲げた。昨年の山口大会では新創業というテーマを発表した。第1ステージでは最小限機能の確認と実現ということで業態変革のミニマムを提唱した。今現在、第3ステージまで来ているが、業態変革というと大変難しいと受け止められがちであるが、決して難しくはない。業態変革の目的、狙いは何かということを考えると答えが出てくると言われている。お客様の役に立つためという、ただそこだけである。そのための自社の在り様、ビジネスの仕方、その辺を考えてほしいということであり、第1ステージ、第2ステージ、第3ステージと進めて来た。新創業ということを、よく分からないという人もいると思うが、山口大会で発表した冊子の中にも書いてあるが、創業当時よりも大変物が豊かになった。物ばかりでなく工場も立派になった。設備もデジタル化され、創業時と比べ雲泥の差になった。資金も豊かになった。社員も増えた。当時と比べると大変豊かになったことは事実であるが、唯一つ豊かでないものがあるとすれば創業時の思いではないだろうかということを浅野会長は言っていた。
 今回の第3ステージ「新創業」では、是非、創業時の思いをもう一度みなぎらせて新しい業域を拡大していこうということで、新創業ということを打ち出した。ワンストップサービスということも提案した。
伸展する印刷付帯サービス
 話は少し古くなるが、一昨年アメリカの印刷工業会の会長が日本印刷産業連合会主催のセミナーで話をした。勿論、アメリカの印刷業界がイコール日本の印刷業界というわけではないが、アメリカの印刷業界の先行きを見れば、ある程度私どもの印刷業界にも参考になるものがある。その話の中で、1ドルの印刷物の仕事をいただくと、その影には6〜8ドルの印刷付帯サービスが隠れている。それだけのマーケットがあるということを言っていた。今、私ども何とか新しい事業を掘り起こそうということで全力を挙げているが、一方ではお客様の裏に隠れた仕事、いわゆる付帯サービスがアメリカでは大変伸びているということであるので、私ども日本の印刷産業でもこの辺についてスポットを当てて考えていったらどうだろうかということである。付帯サービスにどんなものがあるかというと、データ管理、発送代行業務、データベース等いろいろなものがある。そういう意味で、今回新創業と合わせてワンストップサービスという言葉を皆様に提案をした。印刷会社から見たワンストップサービスではなく、あくまでもお客様から見たワンストップサービスという考えである。お客様になるべく面倒をかけない、その分については全部印刷業が引き受けるということで、ワンストップサービスを提案した。ただ私ども中小企業の場合には全てを受けることはなかなか難しいことがあるので、そのためのコラボレーション、お互いに共創をして、共創ネットワークを作って仕事をいただくという考えも中に入っている。是非、業態変革推進プランを取り組んでほしいと思う。
5Sの実践
 浅野会長が年始のあいさつで、業態変革のミニマムに絡むことであるが、皆さんはおそらく年末年始にかけて会社、家庭で大掃除をしたと思う。その時に初めて、1年経ってみて、いらないもの、取っておいたもので不要なもの、賞味期限が切れたもの等たくさん出てきたということがあったと思う。こういったものを取っておくことこそコストを逆にかけているという話をしていた。なぜここに1年間使わないで取っておいたのだろう、あるいはなぜここがこんなに汚れていたのだろう、汚したのは誰なのか、なぜ使わないでおいて置いたのか、そこのところを是非考えてほしいというような話をしていた。単にそこに1年間置いてあったよということであればそれで終わりなってしまう。それを置かないようにするにはどうしたらよいのか。実はそこからスタートである。それからの先はそこから出てくる。
業態変革は身近なことから
 業態変革というと、何か難しいこと、突拍子もないこと、あるいは印刷と180度違うことをやらなければいけないということを考えている人が多いが、実はそうではない。身近なところからそういった考えを取り入れてほしいという話をしていた。
 そういう意味で第3ステージが難しければ、第1ステージに立ち返ってほしい。あるいは第2ステージからでも始めてほしいということである。
 今年は、業態変革推進プランの新創業についてのセミナーが企画をされているが、是非このセミナーに参加いただいて業態変革の真の狙いは何かを考えてほしいと思っている。
 年末に第3ステージの冊子が出来上がったので各県にも送ったので、組合員の皆様に年明け早々に届くと思うのでお読みいただきたい。
 「日本の印刷」に100年企業を連載している。100年間企業を継続して来られた会社である。勿論、最初から100年経った企業ではない。創業時、5年、10年と積み重ねていった結果100年経ったということである。それぞれの時代時代に合わせて、事業の内容あるいはお客様を変えていったというようなことがいろいろと書かれている。
2度にわたる印刷用紙値上げ
 印刷用紙の値上げについて、10月分の用紙価格調査の集計結果が出た。昨年、春と秋の2度にわたって価格改訂の発表が行われたが、実際、各社が値上げを受け入れたのか、あるいは受け入れていないのかをアンケート調査した。値上げ要請があったが受け入れなかった、拒否したが2割くらい、値上げの率、金額は平均すると7%、金額では約11円という数字が出ている。値上げ時期では10月が一番多かった。あと交渉中というのが大多数である。全国平均であるので各地区、都市によって異なると思うがこういった状況である。
料金競争からの脱却
 日経に日印産連のコメントという形で取材記事が掲載された。これが出たら早速、公正取引委員会から呼び出しがあったようである。日印産連の畠山専務理事から聞いたところ自分の趣旨と若干違うことも書かれているということであった。
 日印産連は、全印工連はじめ大手の印刷工業会、ジャグラ等10団体が加盟をしている。グラビア関係は8回の値上げが行われているということである。2回でも大変だということで製紙メーカーとやり取りをしているが、グラビア関係の原油が直接の原料となる石化製品は8回の値上がりである。産業界全体が素材の高騰を受けて価格転嫁を進めている状況では、大変タイミングがいい。一般の消費者の方にもこの辺のところを是非理解いただきたいということで、日経に意見広告を掲載した。印刷会社向けではなく、一般の方々に業界の窮状を理解いただきたいということと価格転嫁をこの機会にさせていただきたいということである。因みに料金は800万円以上である。全国版ということで費用がかかったが、これが一つの契機になって印刷会社の皆さん、営業マンの皆さんが、お得様にこの記事をコピーして各社の事情に応じて価格転嫁をお願いしたいということである。どうも私ども印刷会社は、気が弱いので上からどんどん値上がりが進むと、私どもで値上がりを全部ストップしてしまう。消費者の方にはなるべく負担を掛けないということで中小印刷会社が全てそれを今まではかぶっていた。もうこれからはかぶるような状況ではない。是非、この機会に価格転嫁を進めていただきたいと願っているし、またそうして行かないと私どもはこれからの時代大変難しいと思っている。先ほどの工業統計の数字にもあったが、印刷会社が、歯が抜けるように、印刷という業界からぼろぼろ落ちて行っている。ここで料金競争から手を離れて、適正価格の競争、付加価値の高い競争に移らなければいけないだろうと思っている。口で言うのは優しいが、実際は大変難しいという理解をしているが、今回の原油価格という大きな波をプラスに活かして行きたいと思っている。

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