改正高年齢者等雇用安定法では、平成18年4月1日から、年金の支給開始年齢(男性の定額部分)の引き上げに合わせて平成25年4月1日まで段階的に高年齢者雇用確保措置の導入が義務づけられます。
(1)高年齢者雇用確保措置
(1)65歳までの定年年齢の引上げ
(2)継続雇用制度(再雇用・勤務延長)の導入
(3)定年制の廃止
(2)高年齢者雇用確保措置の年齢
(1)平成18年4月1日〜平成19年3月31日 |
62歳 |
(2)平成19年4月1日〜平成22年3月31日 |
63歳 |
(3)平成22年4月1日〜平成25年3月31日 |
64歳 |
(4)平成25年4月1日〜 |
65歳 |
継続雇用制度を導入する場合は、原則として希望者全員を対象とする制度の導入が求められますが、労使協定で対象者の基準を定めることが認められます。(この労使協定は監督署への届出は不要です。)
基準は、事業主が特定の者を恣意的に対象から排除したり、他の法令や公序良俗に反するものは認められません。
労働者自ら基準に適合するか否かをある程度予見することができるよう、具体的にはかれるものであることや、必要とされる能力等が客観的に示されており、可能性を予見することができるものであることなどに注意する必要があります。
労使協定の協議が不調に終わった場合は、事業主が継続雇用制度の対象者を選定する基準を就業規則等に定めたときは雇用確保措置を導入したものと認められます。(ただし、常時雇用する労働者数300人以下の企業では、平成23年3月末まで、301人以上の企業では平成21年3月末までの経過措置です。)
また、高年齢者雇用確保措置を新たに導入した事業主を支援する助成金を受けることができる場合があります。
〔参考資料〕
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1.継続雇用制度の対象者を選定する基準を設ける場合の労使協定の例
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再雇用制度の適用対象者を選定する基準に関する協定書
○○印刷株式会社代表取締役○○○○と○○印刷株式会社労働者代表○○○○は、高年齢者等の雇用が安定する法律第9条第2項の規定に基づき、当社規定の再雇用制度の適用対象とする者を選定する基準について下記のとおり協定する。
1 次の各項目に掲げる基準のいずれにも該当する者について再雇用するものとする。
(1)引き続き勤務することを希望していること
(2)直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
(3)無断欠勤がないこと
(4)過去○年間の平均考課が○以上であること
2 本協定の有効期間は、平成○年○月○日から平成○年○月○日までとする。
3 本協定に定める事項について変更する必要が生じた場合には、1ヵ月前までに協議を行い変更を行うものとする。
平成○年○月○日
○○印刷株式会社労働者代表○○○○印
○○印刷株式会社代表取締役○○○○印
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※労使協定で基準を定めた場合、その旨を就業規則に定め、就業規則の変更を所轄の監督署へ届け出る必要があります。
2.労使協定が不調に終わり就業規則に再雇用制度を規定する場合の規定例 |
第○条 従業員の定年は、満60歳とし、60歳に到達した日が属する月の末日をもって退職とする。ただし、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当するものについては再雇用する。
(1)引き続き勤務することを希望していること
(2)直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
(3)無断欠勤がないこと
(4)過去○年間の平均考課が○以上であること
2 再雇用は、原則1年単位の契約とし、前項(2)を勘案して反復更新するものとする。
3 再雇用の上限年齢は65歳とする。
4 再雇用に関するその他の事項については、別に定める再雇用規定によるものとする。 |
Q 平成18年4月1日以降当分の間、60歳に達する労働者がいない場合でも、継続雇用制度の導入等を行わなければならないのでしょうか?
A 法においては、事業主の定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等の制度導入を義務づけているものであるため、当分の間、60歳以上の労働者が生じない企業であっても、平成18年4月1日以降、65歳までの定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じなければなりません。
Q 継続雇用制度を導入していれば、平成18年4月1日以降の60歳定年による退職は無効となるのでしょぅか?
A 法においては、事業主に定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等の制度導入を義務づけているものであり、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものではありません。継続雇用制度を導入していない60歳定年制の企業において、定年を理由として60歳で退職させたとしても、それが直ちに無効となるものではないと考えられますが、適切な継続雇用制度の導入等がなされていない事実を把握した場合には、改正高年齢者雇用安定法違反となりますので、公共職業安定所を通じて実態を調査し、必要に応じて助言、指導、勧告を行うことになります。
Q 再雇用する場合、定年退職の日から1日の空白があってもだめなのでしょうか?
A 継続雇用制度は、定年後も引き続き、雇用する制度ですが、雇用管理の事務手続上等の必要性から、定年の翌日から雇用する制度となっていないことをもって、直ちに法に違反するとまではいえないと考えており、「継続雇用制度」として取り扱うことは差し支えありません。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には「継続雇用制度」といえない場合もあります。
Q 本人と事業主との間で賃金と労働時間の条件が合意できず、再雇用を拒否した場合も違反になるのでしょうか。
A 事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で条件等に合意が得られず、結果的に再雇用されることを拒否したとしても法に違反となるものではありません。