「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」説明会開催
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「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」説明会が、平成16年度下期北海道地区印刷協議会の第2部として、1月11日午後2時45分から札幌市中央区の札幌グランドホテルで、講師に全日本印刷工業組合連合会業態変革推進企画室委員の木野瀬吉孝氏(木野瀬印刷株式会社代表取締役・愛知県春日井市)を迎え、80余名が出席して開催されました。 講演要旨を紹介します。 (文責:編集部) | ||||
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〔第2部〕
「業態変革推進プラン−全印工連2008計画」 全日本印刷工業組合連合会業態変革推進企画室委員 はじめに
「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」の説明会という話ですが、皆さんのお手元に「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」の冊子が行っていると思います。一番後の頁に載っている委員会のメンバーで激論に激論を重ねこれを作り上げました。2005計画を皆さんはご存知だと思います。私自身、印刷組合にあまり興味はありませんでしたが、2005計画が出た時から私の意識が変わりましたし、組合自体が変わって行くと本当に感じました。ただ2005計画というのは凄く細分化されていまして、自分達の業態に合わせてもあまりにも細分化されていると、どれをとって、どうやって行っていいのかという若干の弊害もありました。それをもとにこの2008計画を始めましたが、毎月、東京に集まりまして3時間の激論を交わして、何か発言すると、その人に役割がまわってくるということになってしまいました。この冊子をまとめるにあたりましても第1章から第5章までありますが、これにはリード文がないとその章ごとに何が書いてあるか分からないのでリード文が必要ではないかと言いましたら、全員がそうだそうだと言い、そうしたら木野瀬やれということになり役割がまわって来ました。そういうことの積み重ねでこの冊子ができました。冊子の内容を熟知するだけであれば冊子を読んでいただければそれで終わってしまいますので、そうではなく業態変革を誰のために、どんな方法で、さらにもっと大事なことはどんな精神で実行し、最終的には本当に実現するのか、そういうことを皆さんと一緒に考えて、皆さんの心の中へ訴えることができましたら、それで私の講演は二重丸としていただきたいと思っています。ですからこの冊子から脱線することが度々あると思いますが、その時は講師選びが間違っていたとご容赦を願います。 業態変革とは何か 先ず、業態変革とはどういうことかです。変化と変革です。変化はディフェンスで受動的なこと、要するに時代の流れに沿って時代が変わっていく、それに乗って自分も変わって行くこれが変化です。変革とはオフェンスで能動的に自分がどうしたいのか、どうするのか、先ほど言いましたようにそれは誰のためにということです。これは結論から言います。お客様のためにです。業態変革は、お客様のために我々の業態をどう変革させて行くか、自分たちの会社をどう変えて行くか、自分たちの会社の社員の意識をどう変えて行くのか、そのありようだと私は理解しています。今年の当社のスローガンは、「変化から変革へ」です。はやり社員一人一人の意識、私自身の意識です。そこからを原点として能動的に変えて行かなければ何も変わって行きません。お客様のためにと先ほど言いましたが、では客様は何を求めているのかです。 日本が直面している変化の原因 日本が直面している変化の原因に4つの潮流と影響ということがあります。国際化、高度情報化、少子高齢化、成熟化です。これは一瞬聞いていると凄く耳当りがいい言葉ですが、下手をしたらこれらは全部、我々の今までのことの足を引っ張ります。見方によっては相当足を引っ張るということであります。特に少子高齢化は圧倒的にお客さんを無くしているということです。例えばここはホテルですので結婚式もやっているでしょうが、少子高齢化になった時には、ましてや成熟化社会の中で結婚率が落ちていますので当然結婚式の数は減っていきます。昨日は成人の日でしたが新成人の数が我々の時は220万人でありましたが今年は150万人でした。それだけの人数が少なくなった時にどうなるかです。お客さんの数が少なくなって来ます。自動車学校もそうであります。圧倒的に免許を取る人が少なくなっています。名古屋の自動車学校は次々と潰れたり、店閉まいをしています。何故かといいますと、主婦層も完全に若年層の時から免許を取ってしまいました。そして18歳人口がどんどん減少しています。そうしたら益々キャパが少なくなってしまいます。 3つの大きな変化
スクリーンに映っています絵と文書は全印工連が作りました。これからどんどん怖い文書が出てきますが、私はよくこれだけ思い切って我々に脅しをかけるようなものを作ったものだと感心をしています。なかなか組合というものはそこまで踏み込めませんでした。これでいいのかというものをたくさん作っていますので見ながら味わってほしいと思います。 技術の専門性が薄れた それに付随して技術の専門性が薄れました。ここに懐かしい言葉が並んでいます。活字、植字、製版、それが70年代でした。私の会社も最初入ったころは活字の馬があり、職人が活字を拾いそれを組んで、また元に戻していました。今から考えてみると凄くのんびりしたいい時代だと思いますが、これが完全に変わりました。それから写植から電算写植の時代に変わって行きました。その後のトータルスキャナで、この辺りからデジタル化の投資が始まりました。次にDTP、イメージセッタです。製版はDTPが謳歌できた時代です。95年にCTPが始まりました。そしてWindowsです。最終的にどうなったかといいますと印刷技術の専門性が薄れたのです。今はお客様からデータをもらいそのまま刷るものが本当に増えています。加工して印刷するものも増えています。オンデマンドビジネスとも言われていますが、そうではなくてもそれに類するものが皆さんの周りにどんどん増えてきていると思います。 印刷産業の出荷額の消失 冊子の24頁にグラフがありますが、1991年に印刷産業の出荷額は9兆円に迫っていました。この頃、印刷産業は将来14兆円産業になると言われました。これから増えて行ったらどうやって機械を揃えていったらよいかということを考えていた時代です。それから下降線を辿り、今は15%以上、下がっています。どうして下がったかといいますと、プリプレスのデジタル化により2.9兆円が消失しました。昔はマスクがどうだとか製版一つにしても凄い手間をかけて凄い料金をとっていました。それを証拠に製版会社は物凄く設備投資をして、その時代を謳歌しました。その製版会社はさぼっていたかというとさぼってはいませんでした。ずうっといい仕事をしてきました。でも残念なことに技術革新によってお客様はそれを必要としなくなってしまいました。もう一つは印刷の価格低下により1.4兆円が消失しています。北海道は官公需で既に物品販売から製造請負に変わって、入札の最低制限価格も実施されていると聞いています。全国的にその勢いを持っていかないと揺り戻しが来るような気がしてなりません。ですから北海道の方にお願いしておきたいことは、道内以外の印刷業者に北海道はこうしているのに、お前のところは何をやっているのかとどんどん言ってください。そうでないと何かのときに逆の潮流が来たときに同じようなことになってしまう可能性があります。愛知県も北海道、東北地区、香川県を真似てこれを進めようとしています。しかし、愛知県の場合は幸か不幸は景気がそんなに悪化していない部分があります。トヨタとか万博とか中部新国際空港の開港を控え、そういう風潮ではありません。こういう時は逆向きのそういうことは物凄く弱いと思います。北海道で成功したということをどんどん吹聴していただきたいと思います。 価格競争は愚かな行為 冊子の6頁に「価格競争は愚か行為です」とあります。価格について中村前全印工連会長が、「第1は経営者のモラルです。経営者のモラルは経営者の価格戦略であり、経営者が価格をどのように戦略化するかが大切です。価格を現場の営業マンに対応させているのでは経営者の資格はありません。価格は経営者の責任です。」と整理されています。大手の印刷会社が全て悪という言葉は使いませんが、大手の印刷会社は損益分岐点を越えると何故か売上げを達成したがります。そうすると無茶苦茶な価格で持っていくことになります。こちらの北海道地区のことはよく分かりませんが、そういう傾向が我々の近辺にはあります。そういうような無意味な我々の仕事の価値を無くすようなことを止めない限り先ほどの低落傾向には絶対歯止めがかからないと思います。 不況を転機に 私どもの会社の昨年のスローガンが「不況よし、知恵の出し時、工夫のし時」でした。これは昔、松下幸之助さんが言った言葉です。それをスローガンに使わさせてもらいました。不況は企業にとってダメージになりますが、不況によって生まれるものも物凄く大きいと思います。私どもの会社は社員が一所懸命頑張ってくれまして、今年度は前年対比で売上げが25%増えています。新事業もやりましたのでこのまま行くと多分30%は増えると思います。中身を伴うように今一生懸命やっていますが、どうしてこのようなことができたかといいますと不況のお蔭であります。私は、今から20年前の34歳の時、ある朝突然父親が亡くなったので社長に就任したわけです。その頃、仕事はどんどん入ってきました。もし今と同じような仕事の形態をとっていたらどうなっていたかといいますと、社員は全員辞めていったと思います。ある新事業のために、この3ヵ月間で休み無しで働いた社員が当社に4人います。でもそれは何故大切かということを一所懸命話し合っていますから、彼らに休めと言っても休みませんでした。それも若手です。一番の年長者が32歳でした。それでも休みませんでした。それは何のお蔭かといいますと不況のお蔭なのです。不況のお蔭で新事業を手がけることも出来ましたし、不況のお蔭で胸襟を開いて何が大切なのか、どうしたらいいのかということを話し合うことができました。そうしたら休日はどうしたらいいのか。このシステムで実行するにはどうしたらいいのか。新しいビジネスはどうっやって成功させるのか。これらを真剣に話し合いました。これは不況がなかったら絶対にできません。先ほども言いましたように、機械の償却だけを考えていれば良い時代、ゴルフをしていても、一所懸命仕事をしても結果は同じような時代でなく、今は真剣に考える人が報われる時代になり、本当に平等な社会にこの不況のお蔭でなったと感じています。ですから不況のお蔭でそういうようなプラス材料も出てきます。いろいろなことが考えられます。業態変革も然りです。不況のお蔭でこういうことがどんどん考えられます。もしあのまま14兆円産業まっしぐらでありましたら「業態変革」ではなく「業態そのまま計画」です。業態そのままでどうやって行ったらいいのか、どうやって仕事をこなしたらいいのかという議論をそういう講師を招いてここで講演会をしていたと思います。しかし、それが全く違う時代になってきたということです。業 業態の幅はデジタル これからは業態の幅を広げる時代に入ってきたと思います。業態の幅つまりデジタルです。前回の北海道の講演でも話をしましたが、当社の社員が花井さんの講演でホームページは印刷業の仕事ということを聞いて、役所へ行ってホームページの申請を行いました。そうしたらコンテンツ会社と一緒に呼ばれました。ことごとく全部勝ちました。何故かといいますと向こうは全部丸投げをしていて高いのです。デザインも丸投げ、いろいろなことも丸投げして、訳の分からないところにやらせて掠め取るやり方です。我々は広報の仕事をしていますので市のことは物凄く詳しいので、何がポイントかということが分かっていますので、提案するプレゼンも何処より素晴らしいということになってきます。この業態の幅を広げたところからスタートして、今当社が何をやろうとしているかといいますと、広報の発行部数を半分に減らすことをシステム的に提案しようとしています。今いろいろな市町村の広報は、半値八掛の時代になってきました。何故かといいますと、先ほどいいましたように我々経営者のモラルの低下によりとんでもない値段が当たり前に出るようになってきました。普通に入札したら馬鹿らしくてできない時代になってきました。それであったらどうしたらよいのか。その中枢に占めるものはなにか。広報は何も印刷物で見せる必要はありません。ましてやデータベース化になっていない広報がたくさんあります。例えば文化センターの1年分の利用状況をチェックしたいというときにXML化になっていてデータベース化になっていれば誰でもそれを簡単に引き出せます。広報で蓄積されたものがあれば引き出せます。ましてや3歳児健診をチェックしたい人は3歳児健診だけを見たいわけです。そうしたら携帯電話で3歳児健診と入力すると日にちが出てくる、場所が出てくる。そのように広報の入力形態を変えます。今は、住基ネットとの関係があり、各市町村はセキュリティーポリシーを物凄く大事にしています。セキュリティーポリシーとは要するに外から入られていろいろな物が覗けない仕組みです。これもやりようによっては出来ます。そのシステムを今、当社で開発しています。それは当社の力だけでできるものではありませんので、四国の会社とコラボレーションをして開発し提案をしています。99.9%受注に漕ぎ着けました。あとはどう入札をクリアするかですが、多分これは採用されると思います。そうしたらそれを全国に広げて行き 業態変革に企業規模は関係ない この冊子にはいろいろな方法が書いてあります。第1章には業態変革は会社の規模ではない。2〜3人の企業がこれだけ成功したという事例も書いてあります。実際に人数、規模は関係ないということが言えると思います。しかし、方法をきちんと我々で見つけて100通り200通りある方法の中からどのように進めていくのか。中には印刷業にだけ特化しているような会社もあると思います。それはそれで素晴らしいことです。印刷業に特化してこういう印刷は我が社にしかできない。いろいろな印刷物があるが、高精度のものは我が社にしかできない、薄物は我が社にしかできない、精度は悪いが早い印刷は我が社にしかできない。全部が本当に早くて綺麗な印刷物が求められるかといいますと違う印刷物もあります。大体でいいけれど早くて安い方がいいものなどもあります。いろいろな形態で印刷物に特化するということはあると思います。よくフォーム印刷は衰退していると言われますが、私は全くそう思いません。といいますのは我々のような印刷会社がフォーム印刷機を持つと、当社にもフォーム印刷機が1台あり、それを長年あるオペレータが使っていますが、その人が倒れたり定年になったらどうするのかを私自身考えていました。そうするとまた雇わなくてはいけないか。そうすると機械も老朽化しているので買わなくてはいけないか。そう考えていましたが、考えてみたらフォーム印刷を自社でやるのを止めればいいだけのことです。やってくれる印刷会社はたくさんあると思います。フォーム印刷は先細りになりながらも絶対残っていきますから、そういうものは今度はどこかに集約してやればよいことになります。そういう感覚になれば、業態変革というのはそこの中でもお客さんの捉え方を変えるだけでできることはたくさんあると私は考えています。 業態変革の第一ステージ 「顧客の3大不満は、時間、品質保証、価格です。印刷業界も大競争時代です。もう一度真っ当な印刷業者になろう」というところが私は一番怖いと思いました。真っ当な印刷業者になろうというあたりは理解できます。 真っ当な印刷業者 私たちの町でラーメンで町作りを行うということでした。札幌でもないのにラーメンでと思いましたが、15店舗でラーメン頑固会というものを作りました。そこから木野瀬印刷はいろいろなアイディアを持っているのでやってほしいと依頼してきました。母の日には子供たちに似顔絵を描いてもらい店内に張って家族に来てもらってというようなアイディアをたくさん出してほしい。そういうものをプロモーションしてその都度チラシを打つので木野瀬さん考えてよということでありました。その話を聞いていてその場でそういうものもう止めませんかと言いましたら、向こうがむーっとして、任せるというのだから請負うのがあなたたちの役目でしょうと叱られました。営業は社長を連れて来いと言われ連れて来たら、私が足を引っ張るようなことを言うものですから気が気でない顔をしていましが、そんな企画を行っていても種切れになったら終わりでしょう。あなたたちのやらなくてはいけないことは本当のお客さんにきちんとサービスをすることではないでしょうか。あなたたちは本当のお客さんに本当のサービスをしていますか。実際にいろいろなイベントでチラシを打つとその時は集客が物凄いわけです。しかし、上位25%のお客さんが50%くらいのラーメンを食べています。そういうことがお店によって常連さんで当たり前にあります。そうすると年間15万円くらいラーメンを食べる人、仲間を連れてきたり家族を連れてきたりしてもっと食べる人とチラシを打った時にだけ来てトータル3千円を使う人と同じサービスしていていいのですか。そうではないでしょう。それだけお金を使っていろいろなことをするのであれば、15万円使う人には1万円くらいサービスしてあげなさいよ。3千円の人はサービスするのは止めなさいよ。その仕組みをつくるのに何ができるか一緒に考えましょうということで、リライトカード(ポイントカードのデータの取れるもの)を薦めて話を進めています。当社の社員はもっと高度なものを薦めてラーメン店の主人に、俺たちを馬鹿にするのか俺たちが客に説明できるわけがないではないかと居直れて叱られていました。 有能な人材の離散を防ぐ 昨日、腹の立つことがありました。当社の4大を出て入ってきた4年目の社員が、同級生で同じ系列の短大を出ている女性がいるので一度社長会ってやってくれないかということでした。どうしてというと凄く腕がいいし、性格もいいし、一生懸命やっているが、今やっていることはあまりにも過酷過ぎるし、彼女のやろうとしていることが実現しそうにないから会ってやってくれないかということで会いました。そうしたら夢をもって業界に入ってきたわけですが、最初入った会社が月の残業が大体300時間、徹夜が3日から4日ありました。それを1年くらい続け辞めて今の会社にいます。今の会社はそこまでひどくはありませんが残業手当無し、ボーナス無し、全て無い無いづくしです。薄い小さな月刊誌ですが、彼女一人で企画して取材をして発行しています。凄い能力を持っています。でももう完全に消耗し切っています。私が思いましたのは折角希望を持ってこの業界に入ってきたのにそうやって消耗させてしまったら、その人材を無くすことになります。日本を代表する大手企業の離職率は印刷業界でも低いと思っていましたが、無茶苦茶高いのです。普通はありえません。一部上場企業で世界に艦たる企業が大卒の営業でも離職率が高いのです。現場も凄く離職率が高いです。どういうことかといいますと、本当にいい人材を留め置くシステム、組織になっていないということであります。そういうことでも真っ当な業界にならないといい人材が離散していってしまいます。そうすると何が起きるかといいますと最終的には誰にでもできる仕事の価格競争になってしまいます。いい人材でないといいアイディアは出て来ません。いい人材というのは優秀な人材ではありません。一生懸命頑張って理解しようとする人です。先ほど話しましたラーメン店にいろいろ提案している人間も学生時代はラグビーしかやっていませんでした。彼は入社して10年くらいになりますが、最初に仕事をEメールで受注したのが彼でありました。一番苦手なところを一生懸命頑張ったからです。ですからいい人材を留め置く業界にならないと離散したものは元に戻らないと思います。 時代と政策の移り変わり 経済産業省の担当が紙業印刷業課からメディアコンテンツ課に変わりました。これはもう何度もお聞きなった方もいると思います。要するに世の中が我々を見る目を変えたのに、業態を横に広げようとしなかったらそこで止まってしまうわけです。この業態を広げるのも1社でやっては意味がありません。1社いいところができた、2社いいところができたでは駄目なのです。あの会社は特別だからできるのでは駄目なのです。業界が当り前にそれが出来るようになると全ての人達がその業界を頼りにし出すのです。業界ごとステップアップしていかなければ、そこがいくら目立っていても大手メーカーのネーミングに負けてしまうのです。しかし業界自体がしっかりしていれば、それは先に行けると思います。 業務のオンデマンド化 冊子の26頁に印刷業界の課題と対応があります。その中に「ホワイトカラーの生産性の低下、工務の奮闘で何とか進む仕事」というところがあります。これは凄く大きなテーマだと思います。多分どこの印刷業でも一緒だと思います。 部分最適から全体最適へ 当社は昨年度、年賀のビジネスを行いました。注文書の入力を全て中国で行いました。入力だけの件数は15万件やりました。紙は移動することができませんのでスキャニングをして戻ってくるまで全部3時間以内でやりました。時間帯は朝から昼過ぎまでですから、物凄い短い時間で1日最高5,500件の入力を完遂させました。それもどこの会社にも合うように定義書を150通りも作ってきちんとシステム構築をしたのでできました。印刷も4万件ほどやりました。4万件といいますと当社の大体50年分です。50年分を2ヵ月くらいでやりました。1日最高印刷物を上げたときは2000件余でした。それも印刷に携わる人は合計7人で、4台の機械でやりました。何故できるかといいますとシステムでやるからです。バーコードを読み取るだけで全部できるようにしました。絵柄を確かめて、いちいち印刷機を動かしていたり、いちいちプリターを動かしていたのではそれはできません。それを一気通貫でできるようにしました。冊子の中に何度も出て来ます。部分最適から全体最適へです。今までは私たちの仕事は部分最適でした。例えば請求書を出すまでの納品形態ですが、作業伝票と連動しているところはたくさんあると思います。部分的にいいだけで全体的な一気通貫ではないのです。一気通貫を実現させましょう。それを1社でやると大変ですから、大体をいろいろなところで構築して、カスタマイズするというようなコラボレーションが必要になってきます。 仲間と共に創る「共創ネットワーク」 コラボレーションで面白いことがありました。全印工連の浅野会長の会社は金羊社です。業態変革の矢部委員長の会社は三松堂印刷です。業態変革の水上委員の会社が水上印刷です。この3社は何をやったかといいますと、最初は会議をやっていろいろと話合いをし、その次に社員の交換をやりました。確か工場長の交換もやりました。我々のような会社ではこのオペレータが向こうの会社に行ってどうするのかという気がしますが、その3社は実行しました。若干の規模があるからできたのですが、規模の小さいところでも名古屋で実験を始めました。どういう意図で始めたかといいますと、彼らは冗談半分で俺たちは露出狂だと言っていましたが、そうではなく本当に出来るのは思想が同じで胸襟を開いているからです。これを盗まれたら困るとか、そんな小さなことを考えていましたらできないことです。最後には何をやりたいかといったら、社長の交換をやりたいと真剣に言っていました。社員の交換をやるといろいろなものが見えてきます。向こうの良さもわかる、こちらの駄目さもわかる。逆にこちらの良さも分かり、向こうの悪さもわかる。そういうことを意見交換して本当のレベルアップをしていくといろいろなものが見えて来ますし、いろいろなことができるようになってきます。コラボレーションというのは別に企業と企業が何かをつくり上げることだけでなく、そういうことも当たり前にできる業界であったら本当にすばらしいと思います。当社でもそれをやりたいと思います。そうすると先ず自分のところをきちんしなければいけなくなります。 環境変化は続く 冊子の44頁に業態変革のミニマムが出ています。少なくてもレベル1はやっておいてください。その後はそれぞれの会社の規模や方針に応じてやって、ここに書いてあることが到達点かどうかは別として、こういう方向で取り組んでみてはどうですかということであります。IT基盤の整備の第1歩はEメールです。Eメールを使っていなければそれは駄目です。それは少なくてもクリアしてやりましょうということがこのミニマムです。 基本は5S 生産技術のところに5Sの実践とあります。5Sは基本です。しかし、当社でも一番汚いのは社長室だと言われるくらい基本が疎かだと思っています。当社の工務や営業がいろいろな会社に仕事を出していますが、技術的には一緒なのに、協力会社のある1社にどんどん発注量が少なくなっていきました。その社長が来て木野瀬さん少し冷たいのではと言うのです。社員は原因を言いませんが段々分かってきました。会社が汚いのです。打合せに行ってもそこら辺をガサガサと片付けて慌てて打合せの場所を作ります。片方のところは打合せをするところはきちんとあり綺麗で現場へ行ってもヤレ紙一つ落ちていません。やっぱり綺麗なところに出します。5Sのきちんと出来ているところはお客様に重宝がられるし注文が来るということであります。どんなにいい技術を持っていても見た目が悪ければ駄目ということであります。そういうことを同じようにお客さんにも提案できます。先ほどのラーメン店にもづけづけと物を言います。これをやったら木野瀬さんお客さん来ると思うかいと聞かれますので、来るかも知れないと言いますと、かもかよということになります。その人達を本当にリピーターにするのはあなたたちですよ。ラーメンは脂ぎっているからといってテーブルがネチャネチャしていたり、椅子がベタベタ感じたり、床がペチャペチャというようなラーメン店であったらジーパンを穿いた時にしか行けないラーメン店になってしまいます。デートの時に寄れるラーメン店にしましょう。そういう努力もしないで結果だけ求めてもだめです。リライトカードをやろうがQRコードで新しい宣伝をしようが駄目です。そこが基本です。その基本を守ってどうやって到達点にいくかです。 冊子の上手な活用法 それともう一つ面白いものがあります。冊子の41頁に印刷業簡易健康度チェックチャートがあります。その会社がどういう方向性で行くのか、また健康度はどうなのか。脳梗塞状態なのか、瀕死の重傷なのか、それとも栄養を補給すれば何とか生き延びて行けるのかがこのシュミレーションの中で正直にやると出てきます。皆でやると嘘になりますから、家に帰ったら自分に問いかけてじっくりやってみてください。それと自分ひとりでやらないで社員さんにもやらせてあげてください。どういう見解の差が出るか。こういうことをやると経営者はどうしても良い方向へ持っていってしまいます。10のうち9やってなくても1つやっていると、あれやっているということになります。これは何人かでやると正直な答えがでます。それも一つ確かめてみてください。 コラボレーション メディアフロンティアはコラボレーションの会社です。これには当社も参加しています。1月28日、29日の札幌でのフカミヤ展示会でこの紹介がされます。現在160数社が全国で加入しています。当社はコラボレーションを物凄く進めています。先ほど言いましたように限られた人間が限られた能力の中でやっていますから、自社だけでできるものは限られてきます。提案をするときは広報のような中枢のものでも平気で他所の会社の人を連れて行きます。以前でしたら木野瀬印刷に頼んだのにどうしてそういう無責任なことをするのかと叱られましたが、今は高度情報化の社会です。木野瀬印刷に全てできるわけがないということをお客様は知っています。ですから、そういう人達を連れて一緒に提案をしに行くと、なお一層の信用をされます。さらに間誤付きません。例えば、今日、私がパソコンを操作しながら話をしていたら間誤付くのと一緒です。馴れた人にやってもらえばお客様も安心して聞けます。そういうコラボレーションをやってお客様を安心させていろいろな物を提案します。 印刷組合は共創ネットワークそのもの 昨日の朝、NHKテレビで再放送と思いますが「京都ノ家訓」という番組を放送していました。京都で昔からの家訓を守ってどのように企業を続けているかを紹介していました。その中の一つに帆布でバックを作っているという有名なところがありました。そこのところの家訓は「ようお使いくださって」であります。ですから、直しに、作るより手間をかけることを創業から続けていて、今、新しい需要や新しいファンが増えています。それを無くしたら自分のお店でなくなると言っていました。皆さんにも自分の会社をこうするというものがあると思います。私の会社の社是は利他共栄です。他人を利して共に栄えるです。お客様が第一です。これを鸚鵡返しのように手を変え品を変え私が言うものですから、当社の営業マンはお客さんから物凄く喜ばれています。時には金にもならないのにそこまでするのかと、じれったいこともあります。でも物凄く喜ばれて当社はそのお蔭で仕事をいただいています。もしこれを無くして利益だけに走るくらいでしたら私は会社を閉めてもいいと思っています。 |
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