印刷燦燦
趣味をもとう

常任理事・苫小牧支部長
高橋 正寛
あさひ印刷株式会社代表取締役社長

 50歳を過ぎてから何かと感じ入ることが多くなった。ここ1〜2年年齢も近く懇意にして頂いている先輩方(地元信金)が定年退職を迎え、話題が年金受給と時間の使い方に変わったからである。正直なところ年金の話はまだ他人事であり、年金改革の議論も保険料率の負担増だけが気掛かり。しかし私自身もあと10年少しで年金受給資格者になると考えれば、年金問題も関心事となってくる。
 一番の問題は時間の使い方であると言う。「定年後1〜2カ月は思い描いた自由な時間であったが、半年もすれば苦痛と変わる」。その言葉を聴いて一線を退いた自分を想像してみた。これといった趣味や特技も無く、衣食住の全てを女房任せ、時間を持て余し居場所を探している自分の姿が見えてくる。行く道はゆとりある年金生活どころか家庭内の粗大ゴミ、熟年離婚の危機である。
 そうだ、T趣味をもとう!U
 50年間己の存在を探求し続け、今また新たに将来の居場所を探し求めている。寂しい発想であるが、真剣である。
 趣味を考えるにT飽きっぽい性格Uが最大の難点ゆえ、(1)道具に少々金をかける、(2)夫婦共有を趣味探しの前提とした。結果、選択したものは「カメラ・蕎麦打ち・陶芸」の三点、キーワードは唯一の楽しみであるT旅行Uであった。旅を楽しみながら風景を撮り溜め、美味しい蕎麦に舌鼓し、女房孝行に好きな陶芸を見て歩こうという単純なもの。
 いざ、昨年春デジタル一眼レフカメラを購入、パソコンで現像・加工し、A4判でプリントを始めた。風景ばかり200枚近く撮り溜めたが、自己満足できた写真は僅かに1枚。感性の問題と解っているが、改めて写真の難しさを感じ取っている。
 蕎麦打ちは昨年秋道具一式を購入し、正月に初めての蕎麦打ちを試みた。マニュアルを片手に素人が打ちやすいT内三そばU(そば粉7割)に挑戦、味は別として何とか外形は蕎麦になった。現在はT二八そばUに挑戦している。
 まだ陶芸には手が届かぬが、かくして哀れなT男の居場所探しUがスタートした。ゆとりある年金生活を迎える迄あと10年、50歳を過ぎての手習いであるが生涯を楽しめる趣味を持ちたいと願っている。