平成15年度第2回全道委員長会議
官公需取引の改善へ向け前進
 平成15年度第2回全道委員長会議が、9月5日午後1時から札幌市中央区の札幌パークホテルで、全印工連から武石専務理事、登坂全青協議長、石井業務課長、池尻業務課長補佐、全道から委員70余名が出席して開催された。
 また、全体会議の中で、愛知県の木野瀬印刷株式会社の木野瀬吉孝社長を講師に迎え、「情報産業をめざす印刷マーケティング」〜地方都市における販促成功事例〜をテーマにマーケティングセミナーを開催し、140余名が熱心に聴講した。

〔全体会議・マーケティングセミナー〕
 全体会議は、最初に岸理事長から「今日は、第2回の全道委員長会議になるが、6月に第1回を開催して日があまり開いていないが熱心な討議をお願いしたい。マーケティングセミナーには150人を超える申込みをいただいており皆さんの感心の高さが窺える。また、アクセスサッポロで’03北海道情報・印刷産業展が開催されているが、今年は特にプリプレス分野が充実しているように思われるので是非見学していただきたい」とあいさつが述べられた。
 つづいて、来賓紹介が行われ、来賓を代表して武石全印工連専務理事から「2005計画が4年目を迎えポスト2005計画の準備に入っている。2005計画は共創ネットワークで変化への対応ということであったが、これからは変化への対応だけでは生き残れない。IT環境のインフラの整備が必要である。Web等紙以外のいろいろなメディアへの対応がカギになる。気がついたら紙メディアは縮小しているということになる。大阪の教育委員会で印刷機30台を6円で落札したという話がある。入札をする業者に問題があるが、安ければ良しとする行政にも問題がある。お互いがモラルを守っていかなければならない。現在、日印産連と手を携えて料金問題を進めているが、全国に3,300の自治体がありそれぞれ実情は違うが最低制限価格等の価格破壊を防ぐシステムは殆ど機能していない。これらを導入してもらうよう行政へ働きかけて行く。不況業種認定の10〜12月の3カ月間延長を申請中であるので認可をされると年末資金に利用ができる。ISO14001のインターネット取得を今年11月、医療共済を来年7月に立ち上げる。これも組合員には大きなメリットになる」とあいさつが述べられた。
 次にマーケティングセミナーに移り、愛知県の木野瀬印刷株式会社代表取締役の木野瀬吉孝氏から「地方都市印刷会社の排戦」をテーマに講演が行われた。
 木野瀬講師は、講演の中で、自分の会社が倒産してお客様は何日困るのか、印刷会社のできるマーケティング指南として地方都市商店街の再生、間違いだらけの顧客管理とネットビジネス、0568タウンとE―TOKUカード、印刷会社が文化の担い手となるにはとして自分史・自費出版サポートセンター、漫画・イラストで綴る自分史コンテスト、文化は感動、印刷会社のコンテンツビジネスとしてまず実践、印刷会社の得意技、コラボレーション上手な会社は生き残れるとしてメディアフロンティアの取り組み、特徴のない会社が武器を持つには、地方都市印刷会社が実現した海外進出として大連光進技術有限公司の事例、中国の可能性などについて1時間30分にわたり印刷物の実例を紹介しながら成功事例と失敗事例を披露し、今後の印刷業のあるべき姿を示唆した。

〔委員会〕
 組織・情報、マーケティング、経営革新、教育・技術、労務・環境、共済事業、青年部の7つの委員会に分かれ、(1)事業推進と課題について、(2)意見交換、(3)委員会意見集約、(4)全印工連要望事項集約の討議が1時間20分にわたって行われた。

〔総括会議〕
 各委員会における討議内容や意見・提案などが発表された。

組織・情報委員会
発表者 斎藤副委員長(札幌支部)
加入促進を進めるためパンフレットを作成し、各支部の役員を通じて事業所訪問を行っている。
また、倒産を含めて脱退していく組合員のアンケート調査を行い、少しでも組合員を減らさない努力をしていく。
印刷営業士の資格をもっと権威あるものにしてほしい。
各委員会で決議したことに対する、道工組からのフィードバックを密にして欲しい。
官公庁に製造の請負、最低制限価格の要望を早くしてほしい。
マーケティング委員会
発表者 石井委員(小樽支部)
主な討議の内容は、印刷業にとって如何にマーケティングが必要であるかということであった。
グーテンベルグが印刷術を発明して以来、相当年月が経っているが、その時からメディアの主役は紙媒体であり、それに用いられた技術が印刷である。以後、ラジオ、テレビという電波媒体が登場するが、媒体の主役は印刷の紙媒体であり続けてきたが、今は電子化の波に晒されている。
一方、業界では価格競争が激しさを増しダンピングによりどんどん下降線を辿り、さらに電子技術に翻弄されている。
しかし、あらゆる産業の中で一番先にデジタルの洗礼を受けたのは印刷業界であり、そこでマーケティングということになる。
マーケティングを今までやってきた業界がなかったわけではない。それは広告代理店である。
広告代理店に対して印刷業が取って代わるマーケティングは何であるかが大きなテーマである。
これからは、具体的な立場と武器を確認しながら印刷業界が立ち向かっていけるマーケティングを開発していこうという決議が行われた。
課題としては、今後、市町村合併ということが近々訪れる。かつての地域振興券のように大手の印刷業者に根こそぎ持っていかれたようなことはしたくない。
よって、全印工連と北印工組のマーケティング委員会で計画と戦略を研究していき、今後はコラボをしていこうということである。
経営革新委員会
発表者 藤澤委員(北見支部)
全印工連に今年から官公需部会が設置され、全国的に官公需の問題がクローズアップされて行く。
印刷の形態は、製造の請負、物品の購入、役務の提供と各地域で温度差がある。今は役務の提供の仕事が増えてきている。
電子入札が徐々に増えてきているが、これにはISOの取得を視野に入れておく必要がある。
セキュリティの問題もこれからの大きな経営の問題になってくる。
市町村合併の問題の中で、官公需が少なくなることにより、価格がダンビングにより非常に安くなる。
官公需について発注者側のモラルも考えてもらう必要がある。
役所の印刷物の自家生産も増えてきている。
ダンピングというモラルの低下を招かないような勉強会を開催する必要がある。
教育・技術委員会
発表者 本田委員(十勝支部)
各支部で開催するセミナーを道工組で集約し、セミナー情報の共有化という形で、月1回くらいの割合で各支部へ流すような体制を作って欲しい。
e―ラーニングによるXML入門セミナーを各支部で再度PRして受講を促がす。
10〜20名程度の企業では、従業員は経営者の背中を見て仕事をしている。経営者がしっかりしなければ、特に営業マンには料金問題を言っても話にならない。最終的には経営者のモラルが一番の問題である。
労務・環境委員会
発表者 藤田委員長
全印工連として、インターネットによるISO14001取得の仕組みを構築している。9月26日の全国大会以降本格的なキックオフが始まり、10月に募集、第1次スタートが11月となっている。募集は第1次から第7次くらいまでを予定しており全国で400社くらいがISO14001を取得できるようにしたい。
8月末で、全国で10,776社がISO14001を取得している。その内印刷業が273社、内全印工連組合員が146社、北海道の組合員は3社である。北海道ではこのあと7〜8社が年末から来春にかけて札幌を中心に取得が行われる予定である。
今回のISO14001取得の特徴は、ネットnaviを使い法律やさまざま環境問題について学習しながらネットで回答していくというやり方で、コストの面と期間の面で割安になっている。
1工組5社が1つの単位になるので参加をお願いしたい。
ISO14001を取得するとどんなメリットがあるかということであるが、道内にはグローバル企業、世界企業になっているところは少ないが、私の街、釧路では王子製紙がISO14001を取得しており入札の参加資格にしている。全国企業、世界企業になればなるほどISO14001を取得して環境に優しいことが要求されることになる。
エコ3点セットといわれるSOYインキ、再生紙、水無し印刷が常識になりつつある。
共済事業委員会
発表者 西山委員長
加入促進の重点推進工組の指定を受け、加入促進を行ったところ目標を達成し、全国大会で表彰されることが決定した。
生命共済は、1企業ではできないことであるので、ここのところを事業主の方々に理解をいただいたと思っている。
設備共済も条件が他の保険会社より有利であり、これもを理解いただいたものと思っている。
新しく医療共済ができ、来年に向けて加入促進を行う。まだ、試算の段階であるが内容を専門家に見てもらったところ非常に良心的な料金であるということであった。
今は条件として、安心不安定な時代であるので民間の生命保険をやめ、医療保険に入って来る人が大変多くなってきたことから、全印工連としても医療共済に力を入れることになった。
これらの共済制度を利用して組合員の加入促進を図ってほしい。
今後の方針としては、北海道は今までどおりの訪問営業でいくので、各支部に専門家を連れて営業活動に行くので、その節はよろしくお願いしたい。
青年部委員会
発表者 加藤副委員長(札幌支部)
今日の青年部委員会は、東京から全青協の登坂議長が出席して全青協北海道ブロック協議会として開催した。
来年2月に全青協全国協議会がPRINT4をいう形で開催される。全国印刷緑友会、全印工連全国青年印刷人協議会、日本グラフィックサービス工業会SPACE21、日本青年会議所印刷部会の4団体が垣根を越えた融合を図ることを目的に400人規模で熱い協議を行う。
その中で、経営のデザイニングを行い、自社の経営計画の見直しを行う。
今日は、そのさわりとして登坂議長から自社の経営風土チェックリストが配られた。
これには10項目のチェック項目がある。例えば、(1)こんなご時世だから何とか食べて行ければという雰囲気で社内に成長意欲がない。(2)ここ数年組織の新陳代謝が悪く平均年齢が上がっている。というような項目があり、それを実際に青年部委員会のメンバーがチェックを入れ討議を行った。
テーマを設けることにより、様々な角度から物事が見られ具体的な話ができ有意義な会議であった。
2月のPRINT4に各支部から1人でも多くの青年印刷人に出席してほしいと思っているので、各支部で参加できる環境づくり、ご支援をお願いしたい。
全国→道→支部の連絡体制を作って行きたいと思っているので、各支部でも青年部への情報発信を積極的にお願いしたい。
 各委員会の意見発表に対して、岸北印工組理事長、武石全印工連専務理事から、それぞれ感想所見が述べられた。
理事長集約
岸理事長
官公需の問題、製造の請負の問題は前々からあり、全印工連としても全国的な動きとしてアプローチをしていこうという気運は盛り上がっている。
北海道においても条例を調べ、道とも折衝を行っている。道、札幌市は既に製造の請負になっているが、製造の請負で一件落着ということではなく、一番札落札であることは、どちらにしても一番安いところに落札することになりこれでは困るわけである。
建設業は勿論製造の請負であるが、自社責任施工の中で、工事という性格上、完工後の検査が難しく欠陥が人命に結びつくため最低制限落札価格が設けられている。
印刷物は文章として条例には載っているが殆ど機能していない。道の場合、100万円以下の物件は予定価格の70%を切るものは一部制限をしている実例はあるが、出先の14支庁では機能していない。
最低制限価格導入条件に自社責任施工ということがもし加われば、全印工連の進める共創ネットワークと乖離するという矛盾も生まれてきて、非常に悩ましい問題である。
道は全国に先駆けて電子入札を実施したが、デジタルの電子入札というよりは、半分くらいはアナログの電子入札である。
官公庁に、某ソフトハウスが見積ソフトのアプローチをかけ、説明会を持ちまわりで開催しおり、役所側は非常に関心を持っている。
このようなもので予定価格が算出されることになれば、アナログフイルム製版がなくなりCTPということも考えられる。CTPの普及率が高くなってからではいいが現状のような普及率ではどうにもならない。
そのようなことも連動しながら、最低制限価格を認めてもらう話をしているところである。
官公需の問題は、組合執行部として放置しているわけでなく行動している。
札幌市に対しても印刷の電子発注仕様書を提案する研究を行っている。それをもし役所が採用する気運が高まれば営業マン教育を行う。
先ほど、印刷営業士の話があったが、自社に全部デジタル設備を設けるのではなく、お客さんのデジタル化がどんどん進んでいる中で営業マンがカタカタ語を理解できるようにしてほしい。
そうしないとお客さんが不安で、相手から呼んで貰えないということになる。自社で生産するかどうかは別としてアウトソーシングでも良いので、営業マンは多少のデジタル用語の知識を勉強していただくことが一番の早道である。
価格破壊の話になると先ほど話にあったがやはり経営者の責任なのかもしれない。
官公庁のがらみで今年4月から国立の施設が独立行政法人となり来年からは国立大学も国立大学法人になり統合が行われる。そうなると当然印刷物の発注先が減ることも視野に入れておかなくてはならない。さらに遠隔地から通信でデータのやり取りとなるとデジタルは避けて通れない。このようなお客さんの背景を感じとりながら準備を進めておかなければならない。
青年部でPRINT4の話があったが、次世代を担う人達で組織の一本化を図っていってほしい。
我々がカタカタ語のセミナーを聞いても3分の1分かれば合格点であるが、若い人達は70点以上取れるくらいになってほしい。
全印工連集約
武石専務理事
価格破壊の問題は北海道だけでなく全国各地で悩んでいる。
不況業種指定の際、アンケート調査を行った。事務局で生の数字を集計したところ一番悪かった月は7月で地区では対前年比売上げベースで九州地区が一番悪く次いで北海道、東京でマイナス10%近かった。他の地区もダウン率は違うが売上げが落ちていた。
それを受けて、日印産連で印刷、製版、製本、印刷加工をまとめて10月〜12月の不況業種申請の準備を進めている。
価格の問題がいろいろと出ているが、需要と供給の問題で仕事が少ないということもあるが、モラルの問題にどうしても突き当たってしまう悩ましい問題がある。
昨年、GCJ、ジャクラと価格破壊に何とか歯止めをかけたいということで協議会を作り検討をしてきた。勿論3団体だけでできる問題ではないので日印産連に上げて印刷業界こぞって価格破壊を食い止めていこうと運動をしたが、大手の問題もあり日印産連ベースでは難しかった。
そこで、官公需でダンピング、安値受注が行われていることから、先ず、官公需のダンピングを防ぐことを先に進めようということで、各自治体に最低制限価格を取り入れてもらう運動を行うこととした。
官公需にはいろいろな形態があり、最低制限価格は条例には書いてあるが実際には運用されていないのが実態である。官公需というのは印刷のためにだけあるのではなく、主に土木・建設工事がメインになっている。
印刷は自治体の中ではそう大きなウエイトではなく、担当職員も大きな考えをもって印刷は大変だねということにはなかなかならない。
それであれば逆に、組合レベルで各自治体の窓口に印刷業界の現状を伝えていこうということで、統一仕様書を作って各自治体に提案していく準備を進めている。
統一仕様書は9月の全国大会で発表し、それを活用してもらうことになる。
今まではどちらかというと、何か問題がない限りあまり自治体に伺う機会はなかったと思うが、今後はなるべく印刷業界が表にでて紙だけでなくいろいろなデジタルも印刷業界はできるということも含めて自治体にPRして行くことを全国的に展開していく。
印刷業界は今まで受注産業ということで一歩退いた形で営業をしてきた。街中を歩いてもなかなか印刷会社の看板が目につかないということもその一つである。
紙メディア以外のメディアがどんどん表舞台にでているが、お客さんに一番近いのは我々印刷業界である。営業マンがお客さんのところに行き情報を掴んできている。印刷業界はもっと表に出て紙以外にもいろいろなデータを扱えることを積極的にPRするべきである。
それが少しでもマーケティングの掘り起こしに繋がっていけばよい。
全印工連では今年2005計画のセミナーの中に新しくいくつかのマーケティングセミナーを加えた。北海道でも「顧客満足度を高める営業活動のススメセミナー」を6箇所で開催されることになっている。こういう中でマーケティングの情報を仕入れて生かして行ってほしい。
加入促進は景気の動向にも左右され、やめられる方が多いのも事実である。
しかし、このところ、過去の推移をみると若干なりとも脱退に歯止めがかかったように数字に出ている。これは各県工組で加入促進に取り組んでいる成果である。
勿論、やめる方もいるが、一方では新規加入がある。どこの業界でもそうであるが脱退ばかりではその業界は衰退してしまう。脱退を上回る加入があって始めて組織として活性化されるということである。
ボーダレスの時代であるので、印刷業者に限らず製版、製本業者を加入する運動をしている工組もある。
東北地区では青年会の若い人たちに加入促進の協力をしてもらうという話がでていた。
一度やめた会社に再度アプローチをしようという工組もあった。
こういう経済状況なので加入増強は難しいが、共済事業の生命共済、設備共済等や労務環境事業のISO14001の取得は組合があるからこそ安い価格で提供できる。ここのところをPRしていただき、より一層加入促進に取り組んでいただきたい。
教育・技術でe―ラーニングの話がでていた。インフラが整備されてくると何も一箇所に集まらなくて良いことになり、時間と費用の節約になる。東京工組では先行してe―ラーニングのシステムを導入して、営業マンのためのMXL講座を開講した。これを参考していただき、特に北海道は広い地域であるので一箇所に集まるのは難しいこともあると思うのでe―ラーニングについて研究をしていただきたい。
官公庁のデジタルのからみになるが、今はデジタルとアナログの入り混じった時代である。アナログ時代だとまだ先が読めたが、デジタルの時代になりどんどん世の中は変わって先が読めなくなる。そういう意味で不安感が先にたってくる。
世の中のインフラがどんどん整備され、官公庁、自治体に電子発注の形ができてくるので、われわれも武装をしておかなければならない。そこのところを踏まえて商売をしていかなければ、気がついたら取り残されているということになる。
特に役所の方では、税金の無駄使いをできるだけ止めよということで費用対効果を取り入れ電子入札、電子発注という方向に動いている。
官公需部会では現在シャグラと共同で電子発注の統一仕様書を作成中である。自治体によって中身が違うと思うので一つのモデルとして各自治体に提案していってほしい。
兵庫工組では、印刷会社をリタイアした人達がボランティア組織を作り技術指導をすることを考えているということであった。メーカーに技術指導をしてもらうと相当の費用がかかるので、OBの方々がいろいろな技術指導をボランティアで行うということである。
新潟工組では、環境問題が重視され、官公庁は発注の段階では再生紙使用、グリーン基準適用と細かい指示があるが、納品された印刷物がその基準に合致しているかどうか殆どチェックはされていない。そこで、印刷組合の方で間違いなく再生紙、グリーン基準にあったインキ、製本糊を使っているというように環境に安全であるという製品情報を「製品情報環境シート」作成し、組合員に配布し、必要事項を記入し製品に添付し納品している。