ファミリー・フレンドリー企業
をめざして

 北海道印刷工業組合は、平成13年度から2年間、北海道労働局長(厚生労働省)の認定を受け、「ファミリー・フレンドリー企業」の普及促進を目的に、『育児・介護雇用環境整備事業』を実施しています。
 少子・高齢化の進展の中で、労働者の仕事と家庭とを両立できる環境整備は極めて重要な課題であります。そのため、事業主において、育児・介護等家庭的責任を有する男女労働者が職業生活と家庭生活とのバランスを取りながら働けるように配慮した雇用管理が行われることが必要であります。仕事と家庭とが両立できるさまざまな制度を持ち、家庭的責任に配慮した雇用管理を行う「ファミリー・フレンドリー企業」を目指す必要があります。

ファミリー・フレンドリー企業の事例紹介
 「仕事と家庭を考えるセミナー」が10月28日にホテルポールスター札幌で開催され、平成12年度にファミリー・フレンドリー企業として表彰を受けた株式会社ワコールの長谷川人事企画担当課長から「ワコールにおける育児・介護休業制度の概要と課題」についての基調講演が行われた。
 同社のファミリー・フレンドリー企業への取り組みを紹介します。

株式会社ワコール
〔会社概要〕
  
●創 業:昭和21年6月15日
  ●創 立:昭和24年11月1日
  ●資本金:132億60百万円
  ●代表取締役社長:塚本能交

〔従業員の状況〕
区 分 従業員数 平均年齢 平均勤続年数
男 性 909名 44.0歳 20.0年
女 性 3,657名 34.6歳 8.8年
合 計 4,566名 36.5歳 11.0年

人材マネジメントの方向性
・少数精鋭による事業運営(新ビジネスモデルの構築)
 −厳しい経営環境の中、人材の知的資本の最大活用
・組織・人材マネジメントの再構築
 −企業にとって必要な自律型人材を活かすために必要な組織・制度の再構築
  (「場」の提供と成果・役割に見合った処遇へ)
            ▽
 企業経営の根幹は人材。今まで以上に人材に焦点をあてた制度の構築が求められる。

育児休業制度の概要
・〈施行時期〉
  H4.4.1より施行、H6.4.1改定
・〈育児休業期間〉
法律では「子が1歳に達するまでの連続した期間」となっているものに対し、ワコールでは、「1歳を迎える月末まで」とし、更に「保育施設の受け入れ状況が整わない場合には、1歳の末日以降初めて迎える4月末又は9月末まで」としている。
  
【育児のための勤務時間短縮等措置】
 〈期間〉:当初より「子が3歳に達した月の月末まで」としている。
 〈措置〉:短時間勤務所定外労働をさせない措置を適用している。

育児休業制度の利用状況
・育児休業の利用状況
平成11年 平成12年 平成13年
男性 0 0 0
女性 35(61.4%) 46(59.7%) 34(79.1%)
( )内:育児休業取得者/出産対象者
・育児休業取得後の復職状況
平成11年 平成12年 平成13年
復職者 退職者 復職率 復職者 退職者 復職率 復職者 退職者 復職率
男性 0 0 0 0 0 0 0 0 0
女性 43 0 100% 46 3 94% 36 3 92%

介護休業制度の概要(1)
〈施行時期〉 法律による義務化(H11.4.1)に先立つこと2年、H9.4.1より導入。…H11.4.1改正、H13.4.1再改正
〈対象となる
家族の範囲〉
祖父母、兄弟姉妹、孫について法律では同居要件と扶養要件を課しているが、ワコールでは「同居要件と扶養要件はandではなく、or」としている。
〈期間〉 法律では「連続した3ヵ月」、ワコールでは「通算12ヵ月」とし、連続要件をはずし期間を伸ばした。
〈回数〉 法律では「対象家族1人につき1回」であるが、ワコールでは「3回」まで。
〈社会保険料〉 休業期間中に給与の支払われない月の社会保険料は会社が負担する。
〈厚生貸付制度〉 介護に要する費用として50万円を無利子で貸付ける。

介護休業制度の概要(2)
【介護のための勤務時間短縮等の措置】
〈施行時期〉 法律による義務化(H11.4.1)に先立つこと2年、H9.4.1より導入。…H11.4.1改正
〈期間〉 法律では「介護休業と合わせて3ヵ月」であるが、ワコールでは「介護休業と合わせて通算12ヵ月」。更に申し出回数は「3回」まで。
〈措置〉 短時間勤務所定外労働をさせない措置を適用している。

【介護フレックスタイム制】
〈施行時期〉 H13.4.1より導入。
〈内容〉 介護休業、介護短時間勤務と合わせて通算12ヵ月の範囲で個人の申し出によりフレックスタイム勤務をすることができる。申し出回数は「3回」まで。

介護休業制度の利用状況
・介護休業の利用状況
平成11年 平成12年 平成13年
男性 1 0 0
女性 4 3 4
・介護休業取得後の復職状況
平成11年 平成12年 平成13年
退職者 復職率 復職率 復職者 退職者 復職率 復職者 退職者 復職率
男性 1 0 100% 0 0 0 0 0 0
女性 2 0 100% 3 0 100% 4 0 100%

制度設計に関する考え方
 ワコールの育児休業制度・介護休業制度は、他社に比べて特段進んだものであるとは言えない。制度としての革新性より利用する人の利便性、運用の柔軟性、そして常に労使にて見直しを図っていこうとする改善風土が特徴。特に計画的な取得が不可能な介護休業制度等については、どのような取り方が本人にとって利用しやすく、又周囲の従業員にとっても受け入れやすいのかを主眼として労使で検討してきた。
 ワコールは、以前より「相互信頼経営」「人間尊重経営」を掲げてきた。タイムカードもなく遅刻早退は本人の自由精神に委ねることとしている。これは相互信頼という基本理念が機能して初めて成り立つものであり、今までも、やむを得ない事由であれば可能な限り制度外の配慮も行ってきた。

運用上及び今後の課題
〈キーワード〉
いかに安心して働ける仕組みを構築できるか
  (安心して休める仕組みではない)
・取得するのも従業員、フォローするのも従業員
頭数での代替要員や助成金では、生産性を保持することは困難。
 ・働きやすい環境をいかに整備できるか
SOHO、裁量労働、ライフプランに応じた働き方等、多様な選択肢の提供。
・企業にできることの限界
家庭と仕事の両立は社会全体の課題(家事は女性という固定観念からの脱却)。
行政には、企業や個人に対する助成金だけでなく、実際に働く人の声にもっと耳を傾け、更なるインフラの整備と支援施策の充実を期待。

 本事業における今年度の重点目標は、ファミリー・フレンドリー企業の概念について事業主の理解を深め、同概念を理解する事業主の割合を100%にすることを目指しています。
 どうか、労働者の職業生活と家庭生活の両立を支援するための施策普及により各企業の労働環境の改善を推進してください。