抵抗勢力 常任理事、十勝支部長
角 鎮夫 東洋印刷株式会社代表取締役社長 バブルが崩壊し、デジタル旋風に翻弄されて10年。21世紀という明るい世紀の始まりを、希望と期待をもって迎えたのですが、昨今の心境としては、その希望もはるか彼方に微かに揺らいでいる感であります。 そんな折、ある女流棋士の話を聞く機会がありました。 将棋界にも10年前からITが導入され、コンピュータを使って将棋の勉強をしているとのことです。しかし、コンピュータの将棋の実力はまだ弱く、アマチュアの二〜三段くらいです。ですから、対局レベルを上げる方法としては、プロ棋士の対局データを入れ、それを使って勉強するのです。年間、何千局もの対局が行われていますが、その全てをフロッピーディスクに入れて各棋士の手元に配布されています。 例えば、羽生さんと谷川さんの対局、あるいは加藤さんと中原さんとか、色々な対局を自宅で簡単に見ることができるというわけです。 以前は勉強しようと思えば、将棋連盟に行って莫大な数のファイルの中から勉強したい棋譜を見つけ出し、コピーを取って自宅に持ち帰って、実際に駒を並べての勉強でした。今はボタン一つで対局者別、あるいは戦法別に将棋が簡単に見られるようになっているようです。 将棋指しというのは、すごく先まで読んでいるのだと思われているのですが、将棋は相手がどう指して来るのか分からないゲームだということです。人間対人間の戦いで自分がこう指そうと思った手に対して、相手がこうやってくるかもしれない、こうかもしれない、という3手くらいは考えておく。その3手に対して、この手かあの手かとどんどん枝分かれしていくのだそうです。どの位先をではなく変化を読むといったほうが適切であり、あの手この手の中でどれが良いのかの判断をする形勢判断、つまり対局観が大切なのだとのことです。相手が苦手だというマイナス思考でなく、どんなに形勢が悪くても、最終的には自分が勝つのだというプラス思考のほうが、良い結果をもたらす場合が多いとも言っていました。 変化への対応とプラス思考かァ…、と私は女流棋士の話をまとめました。 それを企業経営に置き換えて考えてみると、技術革新、規制緩和、ライフスタイルの変化等々、激動する環境は理解できても、現実となると私の中で過去の経験と実績が抵抗勢力となって頭を擡げ、即対応に歯止めをかけようとする。 変革は、自ら求めるものにしかやってこないのですが。 |