ITを武器に業域確立
 第2回全道委員長会議開催
  平成13年度第2回全道委員長会議が、9月7日午後1時から札幌市中央区の札幌パークホテルで全印工連から磯野専務理事、全道から委員60余名が出席して開催された。
 また、全体会議の中で、(社)日本印刷技術協会常務理事の斉藤不二男氏を講師に迎え、「印刷企業の市場戦略はどう作るのか」をテーマに経営者研修会を開催し、80余名が熱心に聴講した。

〔全体会議、経営者研修会〕
 全体会議は、岸理事長があいさつを述べた後、磯野全印工連専務理事からあいさつを兼ね全印工連の事業概況について説明が行われた。
 次に、経営者研修会に移り、(社)日本印刷技術協会常務理事の斉藤不二男氏から、「印刷企業の市場戦略はどう作るのか」をテーマに講演が行われた。
 斉藤講師は、講演の中で、自社の市場戦略(ビジョン)の作り方として、優良企業の顔の持ち方、市場・事業領域の範囲の決め方、経営計画書の作成方法について説明し、結論として自社の独自性の強い分野を持つことと作ることを目標として、その実現のためには、顧客重視視点から、製品・技術を構築し、マーケットを構築することであると説明した。
 さらに、独自の個性を持った印刷企業になるための事業領域の決め方として、標的市場・需要対応・独自の競争力などの方向の明確化を図り、それを達成するためには、社内の価値観の共有化と社外に対するアイデンティティの確立が大切であると説明した。
 また、今の時代、印刷企業に求められている機能として、1. 競争が激化する中で如何に自社独自の競争領域、ターゲットを構築できるか、2. 急激な変化を繰り返す環境と市場ニーズに迅速かつ柔軟な対応が出来るか、3. 設定した標的市場ニーズに対して如何に自社の経営資源を有効に活用し継続的な優位性を形成するかであると3つの要素を説明した。
〔委 員 会〕
 組織・情報、マーケティング、経営革新、教育・技術、労務・環境、共済事業の6つの委員会と青年部会に分かれ、1. 事業推進と課題について、2. 意見交換、3. 委員会意見集約、4. 全印工連要望事項集約の討議が1時間30分にわたって行われた。
〔総括会議〕
 各委員会・青年部会における討議内容や意見・提案などが次のとおり発表された。

組織・情報委員会
発表者 佐々木副委員長

・全国の組合員の状況は、1990年が10,926社、現在は9,116社で10年間で1,810社減っている。この1年間では、昨年が9,459社であったのでいろいろな理由があると思うが343社減っている。
・全国で組合員が減っている中で、南空知支部で2社、十勝支部で1社の加入があった。
・各支部で組合員の加入促進を図る時は、本部から役員が出向き一緒に訪問した方が良いのではないかという意見があった。
・地方支部から組合加入のメリットとして、メーカーとタイアップして技術研修会を開催してほしいという声であった。
・また、地方支部で独自にいろいろな研修会を開催するのは難しいので札幌支部で研修会を開催する時、声をかけてほしいという要望があった。
・室蘭支部が50周年を迎え事業を展開するので組合の協力がほしいということであった。
・官公庁入札で、独特な動きをする会社があるので組合として対応ができないかという意見があった。

マーケティング委員会
発表者 花井委員長

・マーケティング委員会関係の研修会は、戦略的営業マン養成コース、SGML・XMLの営業マンコース、同技術コースが用意されているが、今年は北印工組で開催の予定はない。
・出版印刷での中国の瀋陽市からの営業展開が積極的である。主婦の友社、角川書店でも中国での印刷を始める。文庫本、納期の長いもの、モノクロ印刷はこれから恐威になる。また、韓国への印刷発注も増えている。
・長崎県庁で電子入札が開始された。
・岐阜県では印刷会社と県職員の間で通信によるPDF校正の実験が始まっている。
・深川市では、パイロット構想による27,000人の住民票のデジタル入力が行われたが、受注したのはコンピュータ会社であった。
・官公庁でのデザインコンペでデジタルデータの添付が付加されることが多くなりコンペ料金も無料になっており、発注も地元企業とは限らなくなってきている。
・道庁から電子入札のアンケートが行われている。
・平成15年から住民基本台帳が電子化されるのに伴い来年から入力業務が発注される。これにも異業種からの参入が予想されるので、印刷会社が受注できる体制を整えておく必要がある。
・小樽支部では、加入促進のため毎月勉強会を開催している。

経営革新委員会
発表者 板野委員(釧根)

・吉田コーポレーション事例が7月9日に判決が出た。これは注文者の写真、注文者の創意工夫が製版フィルムに入っていても製版フィルムの所有権は印刷会社にあるという判決である。
・用紙・インキ等の材料関係の価格改訂の動きがあるが、現状ではあまり影響はないようである。
・年賀状は、コンビニやパソコンの普及の影響で大変苦戦をしている。
・特色のある企業を目指すといわれているが、地方では何でもやらなければならないのが現状である。
・FD・MOの持込み入稿が多くなってきているが、実際は使えないものも多く、それを営業マンが、クライアントに説明するのに苦慮している。
・このため、十勝支部では、クライアントと業者が一緒に勉強会を開催することを計画している。
・情報・印刷産業展を専門学校、大学、一般ユーザーの方々に見てもらうことによってもこの問題の解決につながるのではないか。
・経営者が直接ユーザーの所へ足を運び、情報やニーズ等の収集を行うことが、ユーザーニーズへ対応できる企業となるための最低条件である。

教育・技術委員会
発表者 青柳委員(室蘭)

・印刷営業士のアフターケアは、各支部で実施されていると思うが具体例として発表はされていない。実際の対応は各支部のセールス会・営業士会となるが、これからはDTPの積算を研究していかなければならない。
・積算価格はそれぞれの見方で十人十色になるがなるべく同じものにして行くようにしなければならない。また、各社の技術に対応した現実的な積算方法の確立が必要である。
・営業士は、積算主体からIT・DTPに対応した技術知識を修得し、新しい需要開拓を図らなければならない。
・ISOの取得は、取得費用の関係で現在は大手企業だけであるが、中小企業でも5〜6社まとまると相当安価で対応が可能になる場合がある。
・旭川支部で、社員教育や技術の身近な問題について事業主4人が講師を努めた研修会を開催したところ好評であった。
・オフセット印刷技能検定の学科試験の教科書、マニュアルがあったら教えてほしいということであった。
・各種資格取得の目的は、印刷業界はこんなに勉強しているという社会的PRと良い人材を育成するという経営の向上の両面をもっているので各社で積極的に取り組んでほしい。
・室蘭市役所の印刷発注の形態を大型物件については物品購入から請負契約に変更してもらった。

労務・環境委員会
発表者 藤田委員長

・有機溶剤への対応として自社でどういう薬品を使い、どんな面が危険かを把握しておく必要がある。また、マテリアル・セーフティー・データ・シート(MSDS)は必ず取り寄せをしておくべきである。
・ISOは、地方の市町村でも取得をしており、行政に遅れをとらない対応をしておかなければ問題が起こる場合も考えられる。
・労働条件制度整備推進事業のアンケートが全国3,000社の企業をモニターとして送られているもので協力をお願いしたい。
・グリーン購入法の関係では、道内では道庁の出先機関の一部で9月1日から導入されている。
・東京では、一般紙と再生紙の価格が逆転して、再生紙の方が安くなっている。


共済事業委員会
発表者 吉田委員(小樽)

・生命共済の北海道の加入率は全国最低である。
・生命共済、経退功、労災上乗せ、設備共済の4つ共済事業は、北印工組には手数料収入、加入者には安い掛金で保障が受けられるというメリットがあるので加入をお願いしたい。
・設備共済は、11月から制度の改訂が行われ、事故率の高い事業所には割増掛金が適用される。またオプションとして情報メディア保障コースが新設される。
・全印工連は、今年から3年間、毎年重点工組15工組を指定して共済加入拡大のキャンペーンを実施する。初年度の重点工組に北海道は入っていないが、来年以降指定される可能性があるので積極的な対応が必要である。



青年部会
発表者 中野委員(旭川)

・今回で2回目の会合であったが、初回の時はどうなるのかと思っていたが、今回の話し合いで何とか形になるのではないかという気がしてきた。
・北海道は広く顔を合わせる機会が少ないのでEメールで連絡を取り合い情報交換を行うことにした。
・組織づくりの土台として規約をつくり、後輩に引き継いで行けるようにしようということになった。
・青年部会を継続していく根幹は事業主の協力がなければならないのでよろしくお願いしたい。
・青年部会は、北印工組、各支部の活動を盛り上げて行ける組織にして行きたい。


 各委員会の意見発表に対して、岸北印工組理事長、磯野全印工連専務理事から、それぞれ感想所見が述べられた。

理事長集約
岸理事長

・組織の拡大では、今の時期拡大は難しい面もあるが継続して活動していくことが必要だと思う。
・電子入札については、道庁では2001年電子道庁ということで進んでおり、全国でも総務省を中心に進行中で、一気加勢の展開も考えられるので、これについては常に頭に入れ準備を進めておかなくてはならない。
・印刷版権については、フィルムは印刷製作工程の一部として印刷会社に帰属が認められる判例が出ているが、電子データの面では新しい難しい問題が発生する可能性があるので対応を検討していかなければならない。
・入札の問題は、あくまでも自由競争が原則である。最近はダンピングという言葉も死語になり公取による不当廉売も摘発は難しいようであるので、発注者とのコミュニケーションにより解決して行くより方法はないのではないか。
・デザインコンペ料金の問題は、相当な費用がかかるので相応の費用負担をお願いできるよう全国的な運動として考える必要がある。
・環境の問題は、印刷物は市民生活にも直結する場合があるので必然的に対応が迫られてくる。
・共済事業については、加入をお願いしたいということに尽きる。
・青年部会は昨日、発会式を終え、名実ともに発足した。これから活動が始まって行くが、一気にどうこうしようということではなく、いろいろな話し合いの中から優先順位をつけ活動していってほしい。
・品質管理については、これからネットワークでアウトソーシングを行うようになると、ネットワークの仲間同志でも共通の品質管理を行っていかなければならない問題となろう。

全印工連集約
磯野専務理事

・青年部会の方の話にあったように、顔を合わせ、話し合いをすることによっていろいろな問題が解決して行く。それがネットワークである。最初から何をやろうということではなかなかうまく行かない。話し合って失敗をして、それが情報となって実を結んで行く。
・設備共済の地震保険の募集を10月一杯で締め切る。いよいよ日本が地震大国となり外国の保険会社が再保険を受けてくれなくなり、日本の損保はこれ以上地震保険を拡大しないことになった。ただ10月までの加入者については継続して保障が適用される。
・共済の拡大キャンペーンは、どぶ板作戦で全道13支部をくまなく回りたいので、是非、現地での説明の機会を作ってほしい。
・吉田コーポレーション事件の話が出ていたが、今までは形があったからどちら側のものということではっきりしたが、これからの電子データの著作権問題については、現在、文化庁で検討しているが結論は出ていなく、新しい紛争の火種になる可能性がある。
・本年4月からPRTR法が施行されているが、殆どの企業は該当しないが、製品安全データシートは念のため取り寄せておく必要がある。


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