中小企業庁が発表
中小企業IT化推進計画

 中小企業庁は4月12日、「中小企業IT化推進計画」を策定した。同計画は平成15年度末を目処とした中小企業のIT化推進に関する具体的計画を定めたものである。同計画からIT化推進の支援策をまとめた。

 中小企業のIT化に向けた課題への対応を支援するため、国、地方公共団体、都道府県等中小企業支援センター、商工会、商工会議所、中央会等の各機関は、適切な役割分担の下で相互に連携を図りつつ、IT化を進める中小企業のIT化推進に向けた国等による基盤整備および中小企業のIT化のための連携支援を進めていく。

1、中小企業のIT化支援
(1)IT活用に対する意識向上と人材の育成
 中小企業のIT化に当たっては、経営者自身がITの効果と問題点を十分理解することが重要であり、中小企業経営者に対し、業種・業態や進展段階に応じた、IT活用に関するITセミナーや実践的な研修を実施する。また、IT導入に対し、中小企業の実態を踏まえたアドバイスができる人材を育成する。
a.セミナー・研修の実施
 平成15年度末において、中小企業のおおむね半数程度がインターネットを活用した電子商取引等を実施できるよう、150万人を目標にして、セミナー・研修を実施する。
●ITセミナー等の開催(平成13年度:約10万人対象)
 ・ 都道府県等中小企業支援センターは、地域の中小企業経営者に対し、ITに関する啓発、普及のためのセミナーを、ITコーディネーター、中小企業診断士等の専門家を活用しつつ開催する。
 ・中小企業総合事業団は、ITを活用して経営革新に成功した中小企業の事例紹介、ITを活用した新商品・技術の展示、IT活用のための具体的ノウハウの提供等を行うITフォーラムを開催する。
●実践的IT研修の実施(平成13年度:約3万人対象)
 都道府県等中小企業支援センターは、中小企業経営者等を対象に、IT活用事例の紹介、インターネットを活用した電子商取引等の実施方法等、実践的なIT研修を実施する。
●中小企業大学校の衛星放送研修、WEB研修(平成13年度:約20万人対象)
 中小企業総合事業団は、衛星放送およびインターネットを活用し、遠隔地の中小企業者等を含むより多くの者に対して効果 的な研修を行う。
●商工会、商工会議所、中央会等によるパソコン研修等(平成13年度:約20万人)
 商工会、商工会議所、中央会等は、保有するパソコン等の設備を活用して、中小・小規模事業者を対象にホームページ作成や電子商取引など企業経営に有用なIT活用についての実践研修を実施する。国は、商工会、商工会議所、中央会等が実施するIT研修を支援する。
●ITセミナー・研修スケジュールの公表
 都道府県等中小企業支援センター、商工会、商工会議所、中央会等の支援機関は、セミナー・研修等事業のスケジュールや内容をホームページ等で公表することにより、中小企業が最も自らに適した研修、セミナー等を選べるよう、利便性の向上を図る。   また、国および地方公共団体は、これらのスケジュールをとりまとめるなど、中小企業の利便性のさらなる向上に向けた取組を推進(検討)する。
●ITに係る職業訓練
 国(雇用・能力開発機構等)は、労働者等がITに係る職務上必要な実践的、応用的能力を習得することを支援するため、公共職業能力開発施設等においてIT職業訓練等を実施する。
b.ITアドバイザーの育成
●ITコーディネーターの育成(平成17年度末までにITコーディネーター1万人)
 ITコーディネーター協会は、中小企業におけるITを活用した経営革新や経営の向上・改善について、的確なアドバイスのできる人材(ITコーディネーター)を育成する。
●IT知識を有する支援担当者の育成
 中小企業総合事業団は、中小企業診断士、経営指導員をはじめとした中小企業の支援を担当する者に対しIT活用に関する研修を実施する。
●ITインストラクターの育成
 国(雇用・能力開発機構)は、中小企業におけるIT訓練の実施を促進・支援するため、ITインストラクターの計画的育成等、地域の事業主団体と連携した各企業のIT訓練体制整備を支援する。
(2)IT化に関するアドバイス・コンサルティング
 中小企業のIT化推進には、専門的な知識や経営革新を踏まえた適切なアドバイスが重要であり、コンサルティング費用を一部負担する等によりIT化に関するアドバイス・コンサルティングを受ける中小企業を支援する。
●ITアドバイザー派遣事業
 ・中小企業総合事業団は、ITコーディネーター、中小企業診断士等の専門家によるIT導入・活用に関するアドバイス事業を行う。
 ・都道府県等中小企業支援センターは、中小企業に対し、IT・経営革新に関するアドバイザーを派遣する事業を行う。
●戦略的情報化投資活性化プロジェクト(ITSSP)
 国は、ITコーディネーターを活用した継続的な企業訪問・経営者交流会を通 じたコンサルティングを積極的に推進し、中小企業がそうした専門家を積極的に活用できるような環境の整備を図る。
(3)ITシステム導入に対する支援
 政府系金融機関のITシステム導入に対する支援を行う。また、商工会、商工会議所、中央会等は、アフターサービスも含めたIT導入支援サービスを行う。
a.資金供給の円滑化
●IT貸付制度の創設
 政府系金融機関において、情報化投資に必要な資金供給の円滑化を図るための融資制度を創設する。
●戦略的リース事業
 国は、戦略的に情報機器の導入を進める中小企業向けの民間リース事業を促進する。
●税制面からの支援
 コンピュータ(電子計算機)の法定耐用年数を短縮するとともに、100万円以上の特定の器具及び備品(パソコン、デジタル複写 機等)等の購入に際して、取得金額の7%の税額控除又は30%の特別償却が受けられる中小企業投資促進税制を平成13年度末まで延長する。
b.商工会、商工会議所、中央会等によるIT導入支援サービス
 商工会、商工会議所、中央会等は、パソコン、インターネットの導入を検討している中小企業を対象に、パソコン、インターネット接続、IT環境構築・利用説明サービス、アフターサービスなどを総合的に斡旋するとともに、ソフトウェアのサポートサービスを行う。

2、中小企業のIT化のための基盤整備
(1)共通基盤的ソフトウェア等の整備
 中小企業のIT化を推進するため、商流・物流における標準化を推進するとともに、ものづくりや商業の分野において中小企業が活用しやすい共通 基盤的ソフトウェア等の開発・普及を行う。
a.新たなビジネスモデルの開発と商業分野の活性化
●業務用アプリケーションソフト開発
  国は、商取引や物流分野の標準化に資するEDIシステム等の中小企業への普及のため、Web‐EDI、Web‐POS等に対応した中小企業向けのソフトウェア等の開発を支援する。
●商業分野におけるIT化の推進
  国は、商業分野におけるIT活用を推進するため、商店街等における先進的なIT活用等の新たなビジネスモデルの開発・普及を行う。
●商流・物流の高度化・効率化システムの開発
  国は、中小卸・小売業における商取引の電子化、共同物流を推進するための標準化、ITを活用した経営支援システムの開発・普及を行う。
●業務用アプリケーションソフトウェアの共同利用等
 ・商工会議所は、中小企業のIT化に利用可能な各種ツールやソリューションを開発した企業と共同で他の中小企業にもこれを紹介し、企業経営に具体的に応用できるように支援するとともに、業務用アプリケーションソフトウェアの共同利用を図る。
 ・商工会は、小規模事業者の業務実態を踏まえ、活用が容易だが購入困難な業務用アプリケーションソフトウェアの共同利用を図る。
 ・ものづくりとITの融合の支援
●ものづくりとITの融合に向けた研究開発
 国は、中小企業熟練技能者が有する技能の客観化・マニュアル化、デジタル化や加工ノウハウのデータベース化及びCAD/CAM等を総合的に運用するための共通 基盤の開発・普及を推進する。
●中小企業向けCAD/CAM研修
 中小企業総合事業団は、公設試験研究機関が実施するCAD/CAM等の活用のための研修等を支援することにより、ものづくりとITとの融合を推進する。
(2)IT化推進のための情報提供
 中小企業のIT化を推進するため、「E‐中小企業庁」、「J‐Net21」を通 じた施策情報の提供、「テクノナレッジネットワーク」による技術情報の提供、商工会、商工会議所、中央会等によるビジネス情報の提供を行う。
a.「E‐中小企業庁」の実施
 中小企業庁は、メールマガジン等を活用して、中小企業に対して施策情報(中小企業トピックス等)を直接提供することにより、従来のパンフレット配布等を通 じた広報に加え、より多くの中小企業に対し、施策の普及・広報を図る (E‐中小企業庁)。あわせて、個々の中小企業からの意見や情報を受け付ける窓口をホームページに設けることにより、ニーズの把握に努め、中小企業にとってより使いやすい施策の改善に反映させる。
b.「J‐Net21」によるワンストップ支援体制の充実
 中小企業総合事業団は、中小企業に関する情報の総合的な管理・検索を可能とする中小企業専門のポータルサイト(J‐Net21)を整備し、中小企業支援担当者及び中小企業者が必要な情報を容易かつ迅速に入手できるワンストップサービスとしての情報提供支援体制を構築・整備する。
c.「テクノナレッジネットワーク」による技術情報提供
 独立行政法人産業技術総合研究所は公設試と協力してネットワーク(テクノナレッジネットワーク)を構築し、技術相談事例等の技術情報を総合的にデータベース化し、インターネットを通 じて提供することにより、中小企業に対する的確かつ効率的な技術支援を行う。(http://www.techno‐qanda.net)
d.商工会、商工会議所、中央会等による情報提供
●企業情報や地域情報の発信
 商工会、商工会議所、都道府県商工会連合会は、インターネット上のホームページを作成して企業情報や地域情報を発信するとともに、中央会は同様にインターネット上ホームページにより組合等の連携組織を通 じた業界情報及び組合員等の企業情報を発信することにより、地域の小規模事業者の事業機会の増大を図る。
●タイムリーな施策情報提供やマーケットプレイスの提供等
 ・商工会議所は、中小・小規模事業者が企業経営に必要となる各種情報を専門に提供するサイトを構築(http://www.kaigisyo.ne.jp)するとともに、一斉同報システムを活用して、会員企業164万社を対象にタイムリーな情報提供を行う体制を整備する。併せて、中小・小規模事業者が参加利用できる電子商取引サービスを設け、事業者の事業機会の増大を図る。また、中小企業が作成したホームページを地域ごとにデータベース化し、本データーベースを総合的に検索できるシステムを運営する。(http://www.cin.or.jp「商工会議所データベース検索」)
 ・全国商工会連合会は、全国110万の会員データベースを構築し、指導業務に役立てるとともに、企業間取引等新しい分野への活用を図る。また、「商工会ネットワーク取引所」、「商工会サイバーモール」、「仮想工業団地」等の電子商取引を行うサービスや、施策情報を始め中小企業に役立つ各種情報提供サービスを設け、事業者の情報化推進を図る。
 ・中央会は、電子メール等による中央会─組合等連携組織─組合員企業の情報連携体制を整備し、業種・業態に則した経営情報を迅速に提供していく。
(3)中小企業が電子商取引を促進するための機能の整備
 中小企業の電子商取引を促進するため、電子認証システムの整備、セキュリティーの確保と消費者の保護等に努める。
a.電子認証システムの整備
 全国的なネットワークを持ち、かつ社会的な信頼を得ている商工会、商工会議所、中央会等の支援機関は、中小企業がオープンネットワーク上で安全に電子商取引を実施できることを促進するため、中小企業の認証を行う第三者認証機関としてのサービス提供を検討する。
b.セキュリティーの確保と消費者の保護
●セキュリティー対策の普及
  商工会、商工会議所、中央会等は、情報セキュリティー確保の方法について、研修・セミナー等を通 じて普及する。
●「オンラインマーク制度」の普及
  商工会議所は、一般に消費者に広く認知されにくい中小企業が、オープンなネットワーク上で消費者に安心して受け入れられることを目的として、バーチャルショップが実在する事業者によって運営されていること、訪問販売法の定めるルールに基づいて運営されていること等を証明する「オンラインマーク制度」の実施及び普及に取り組む。(http://mark.cin.or.jp)
c.政府調達の電子化
 各府省がホームページで提供する調達情報への簡易なアクセスの実現を図るともに、インターネット技術を活用した電子入札・開札を実施するなど政府調達手続きを電子化することにより、企業の負担軽減を図る。
 なお、技術力のある中小企業の入札機会(公共事業を除く。)の拡大を図るため、特定品目の個別 の入札案件については、技術点を加算させること等により、既存の入札参加資格をランクアップし、従来のランクでは入札参加できない大型案件にも入札ができるようにする。
d.売掛債権等の流動化に向けたインターネットの活用
 国は、新たな資金調達手段として有力な売掛債権等の流動化を促進するため、2000年度内を目途に債権譲渡登記のオンライン申請を可能とするとともに、債権譲渡登記に関する情報をインターネット経由で迅速に入手できるようにするための取り組みを進める。また、新たな資金調達手段として有力な売掛債権の流動化を、中小企業においても促進するための具体策について検討する。
e.中小企業の電子商取引を促進するための制度の検討
 国や商工会、商工会議所、中央会等の支援機関は、中小企業の電子商取引を円滑に導入・普及していくために必要な与信、決済、苦情処理、保険等のあり方について検討する。  また、国は、情報処理振興事業協会を通じ、中小企業の信用リスクを定量的に評価するためのデータベースシステムを開発及び事業化するための実証試験等を行う。

3、中小企業のIT化のための連携促進
(1)産学及び地域内連携の推進
 国は、中小企業のIT化のため、地方公共団体が中心となり、中小企業、都道府県等中小企業支援センター、公設試、大学、産業技術総合研究所等が参加する産学連携・ITインターンシップの推進、IT先進事例の情報交換の場として「地域ものづくり協議会」を母体として「地域IT推進協議会」などを設立することを支援する。さらに、地域IT推進協議会が全国レベルで情報交換を行う活動を支援する。
(2)ネットワーク組織化の推進  国及び関係機関、現在の中小企業組合法制(商工組合、事業協同組合、企業組合、協業組合等)の一層の活用を図るとともに、よりIT化対応に相応しい制度や組織法制の在り方について検討する。

〈中小企業のIT化支援〉
(1)IT活用に対する意識向上と人材の育成
 a.セミナー・研修の実施〈平成15年度末までに約150万人を目標〉
 ・ITセミナー等の開催〈H13年度 約10万人〉
 ・実践的IT研修の実施〈H13年度 約3万人〉
 ・中小企業大学校による遠隔研修〈H13年度 約20万人〉(衛星放送研修、Web講義)
 ・商工会、商工会議所、中央会等によるパソコン研修〈H13年度 約20万人〉
 ・ITセミナー、研修スケジュールの公表
 ・ITに係る職業訓練
 b.ITアドバイザーの育成
 ・ITコーディネーターの育成〈H17年度末までに1万人を目標〉
 ・IT知識を有する支援担当者の育成
 ・ITインストラクターの育成
(2)ITに関するアドバイス・コンサルティング支援
 ・ITアドバイザー派遣事業
 ・戦略的情報化投資活性化プロジェクト(ITSSP)
(3)ITシステム導入に対する支援
 a.資金供給の円滑化
 ・政府系金融機関によるIT導入向け貸付
 ・戦略的リース事業
 ・税制面からの支援
 b.商工会、商工会議所、中央会等によるIT導入支援サービス

〈中小企業のIT化のための基盤整備〉
(1)共通基盤的ソフトウェア等の整備
 a.新たなビジネスモデルの開発と商業分野の活性化
 ・業務用アプリケーションソフトウェア開発
 ・商業分野におけるIT化の推進
 ・商流・物流の高度化・効率化システムの開発
 ・業務用アプリケーションソフトウェアの共同利用等
 b.ものづくりとITの融合の支援
 ・ものづくりとITの融合化に向けた研究開発
 ・中小企業向けCAD/CAM研修
(2)IT推進のための情報提供
 a.「E‐中小企業庁」の実施
 b.「J‐Net21」によるワンストップ支援体制の充実
 c.「テクノナレッジネットワーク」による技術情報提供
 d.商工会、商工会議所、中央会等による情報提供
 ・企業情報や地域情報の発信
 ・タイムリーな施策情報提供マーケットプレイスの提供等
(3)中小企業が電子商取引を促進するための機能の整備
 a.電子認証システムの整備
 b.セキュリティー確保と消費者の保護
 ・セキュリティー対策の普及
 ・「オンラインマーク制度」の普及
 c.政府調達の電子化
 d.売掛債権等の流動化に向けたインターネットの活用
 e.中小企業の電子商取引を促進するための制度の検討